地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第125回 大橋敦夫さん:信州・上田弁にひたれるお店

筆者:
2010年11月13日

上田と上田弁とラーメンをこよなく愛する柴崎章氏のお店「六文銭ら~めん 真田幸村」(上田市本町)です。

まずは、その外観から。

六文銭ら~めん 真田幸村 外観
六文銭ら~めん 真田幸村 外観
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六文銭ら~めん 真田幸村 右看板
六文銭ら~めん 真田幸村 左看板

店名をはさんだ計6枚の看板は、方言によるおすすめメニューになっています。(右から読んでいくと、次のような意味になります。)

  • [=六文銭のもつ煮定食は、とてもおいしい]
  • [=激辛ラーメンは、無鉄砲に食べるとおなかが痛い]
  • [=思う存分、遊んだあとの 生ビール]
  • [=あなたも午後のおやつ代わりにみそラーメン]
  • [=競争して取り合うようにして、たくさん食べても、あきないねぇ ギョーザ]
  • [=大食漢、唐揚げをおかずにして飯4杯]

ラーメンはもちろん、多くの方々に上田弁に親しんでもらいたいとの思いから、かつては地元の新聞に、自作の方言番付を披露したこともある柴崎氏。その力作は、これまた自作の方言カルタ(読み札のみ)とともに、『信州上田藩 上田人養成公式ガイドブック』(私家版)に収録され、店内で、注文の品を待つ間に閲覧することができます。

上田にお越しの際は、足を伸ばされてはいかがでしょう。仮に時間外でも、上田弁による「支度中の看板」が出迎えてくれます。

(画像はクリックで拡大します)

六文銭ら~めん 真田幸村

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。