『ガリラヤのイェシュー』という本が出ました。新約聖書の訳です。全国各地の方言を使い分けて、当時の多言語状況を、生き生きと写しています。このシリーズで扱っている「見える方言」のうちの、方言本(第48回、第53回)の一つです。聖書は、文語訳より口語訳が分かりやすいのですが、それよりもこの方言訳は、中身に納得が行きます。【写真】のマルコ伝では、街の人は京都弁で、キリストの弟子ペトロは岩手県大船渡付近のケセン語で話しています。肝心のイエスキリストも「ガリラヤの里言葉」としてのケセン語を話します。
(写真はクリックで拡大します)
発行はイー・ピックス出版という会社で、インターネットで注文できます。
»»//www.epix.co.jp/book-yamaura.html
この会社では、『ケセン語訳聖書』を朗読CD付きで出しました。東日本大震災の津波で倉庫が水につかりましたが、包装されていた聖書は無事でした。「お水くぐりの聖書」としてテレビにも登場し、ほぼ完売したようです。
著者の山浦玄嗣(はるつぐ)さんは熱心なクリスチャンの医師で、大津波の被害にもめげず、被災者の診察で大活躍しました。
方言研究とキリスト教というと、もう一人思い浮かびます。グロータース(Willem A. Grootaers)さんです。カトリックの神父が本業ですが、日本にキリスト教以外に方言地理学(言語地理学)も広めました。2011年は生誕100年にあたりますが、まったく偶然に三つの異なった言語での紹介文が書かれました。神の采配でしょうか。日本語の紹介論文「新日本語学者列伝 グロータース」(沢木幹栄)は、雑誌「日本語学」11月号に載っています。
他はインターネットで読めます。一つは英語で、インターネットジャーナルDialctologiaに載ったものです。
»»”First dialectologists Willem A. GROOTAERS”.
(PDFファイル〔89.8KB〕)
もう一つはオランダ語で、以下で見られます。画像が多いので、中身の見当がつきます。オランダ語で書いてあっても理解できたという、満足感にひたれます。
»»Auwera (2011) “Belgische taalkundigen in de wereld”.
(powerpoint2010ファイル〔7.7MB〕)