子供の頃,お正月にはお年玉をもらい,着るものも履くものも新しくし,新年気分にひたったものでした。屋外では凧揚げ,室内ではカルタ取りなどが定番の遊びでした。
この連載でも,「方言かるた」を第33回,35回,82回,105回,210回で紹介していますが,宮崎県都城(みやこのじょう)市にも『みやこんじょ方言カルタ』があります。これが他とちょっと違っているのは,室内用のふつうサイズのほかに,体育館などでも遊べるようにと,ビッグな絵札=B2サイズ大(約50cm×約70cm)の大型判も作られている点です。
企画したのは,都城の地域おこしと情報発信をしているグループ=「盆ジュール」です(都城は盆地で,それと〔こんにちは〕の意のフランス語にかけたネーミングです)。「楽しみながら,都城の方言を子供たちに少しでも伝えることができれば……」と願い,また大型判は「体を動かしながら楽しく方言と触れあってほしい。学校や公民館などに無料で貸し出したい」と呼びかけ,賛同者からの募金を集めて作りました【写真1】。クラウドファンディングサービスのサイトに,その写真や関連の情報が載っています(https://faavo.jp/miyazaki/project/155)。
大型判の場合,読み札が大声で読み上げられると,子供たちは一斉にめざす札に向かって走りだします。判断力・瞬発力と同時に根気と体力も必要です。特に室内に閉じこもりがちな冬には有効で,格好の運動になります。(その後,高齢者福祉施設から「ふつうのものでは小さ過ぎるが,大きなものでは参加はむつかしい。いっしょに遊びたいのだが……」という要望があり,A5サイズ大(約15cm×約20cm)の中型判も新たに加わりました)。
読み札を見ると方言色満載で【写真2】,
「おいげん きっみやん」
〔私の家に,来てみて〕
俺の家に>おいげん 来てみやり>きっみやん「げんねっせ かおかいひがでっど」
〔恥ずかしくて,顔から火が出るよ〕
げんね〔恥ずかし〕くて>げんねっせ 顔から>顔かい「すんくじらにおらじ こっちき」
〔隅っこにいないで,こっちに来い〕「せからしやっが くっど」
〔うるさい人が来るぞ〕「たのかんさあ しっちょい?」
〔田のかんさあ=この地域特有の田の神様を 知ってる?〕
知っちょる>しっちょい「ちんがらやっど うかぜのあとは」
〔めちゃくちゃだよ 台風の後は〕
などに見られるように,ラ行音の変化が激しかったり,〔~くて〕を「~せ」と言ったり,長音が短くなるなど,鹿児島県の薩隅(さつぐう)方言に通じる特徴がよく現れています。都城は旧薩摩藩に属していましたから……。
子供たちの方言の現状とはかなり差がありますが,彼らがそれを意識して周りの人たちに質問すれば,異世代間のコミュニケーションと交流を図る何よりの機会になります。
「盆ジュール」でこのカルタの企画・制作を担当した内村学さんは,「皆さんに広く利用してもらい,子供たちにも喜んでもらっている」と,確かな手応えを感じています。
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