ロイヤル・タイプライター社は、1939年に「Royal Quiet De Luxe」「Royal Arrow Portable」「Royal Aristocrat」の3モデルを、1940年に「Royal Companion」を、それぞれ発売しました。上の広告では、右上と左下に「Royal Quiet De Luxe」が、中段は左から「Royal Arrow Portable」「Royal Companion」「Royal Aristocrat」が並んでいます。これら4モデルは、いずれも42キーのポータブル・タイプライターで、「Royal Quiet De Luxe」は印字動作をコンパクトにした静音モデルです。「Royal Quiet De Luxe」「Royal Aristocrat」にはタブ機構がありますが、「Royal Arrow Portable」「Royal Companion」にはありません。「Royal Companion」のシフト機構はプラテンが上がりますが、他の3モデルではタイプバスケット全体が沈みます。これら4モデルは、いずれもフロントストライク式タイプライターです。筐体内部に配置された42本の活字棒(type arm)は、各キーを押すことで立ち上がり、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。通常の印字は小文字ですが、キーボード最下段両端のシフトキーを押すと、大文字が印字されるようになります。
「Royal Quiet De Luxe」と「Royal Aristocrat」のキーボードは、基本的に同一のQWERTY配列です。キーボードの最上段は、左端に「BACK SPACE」キーがあり、大文字側に"#$%_&'()*が、小文字側に234567890-が並んでいて、右端に「TAB」キーがあります。その次の段は、大文字側にQWERTYUIOP¼が、小文字側にqwertyuiop½が並んでいて、右端のやや手前に「MAR REL」(マージン・リリース)キーがあります。その次の段は、左端に「LOCK」(シフトロック)キーがあって、大文字側にASDFGHJKL:@が、小文字側にasdfghjkl;¢が並んでいます。最下段は、両端にシフトキーがあって、大文字側にZXCVBNM,.?が、小文字側にzxcvbnm,./が並んでいます。数字の「1」は、小文字の「l」で代用することが想定されていました。上の広告の「Royal Arrow Portable」のキーボードは、最上段右端の「TAB」キーがありません。「Royal Companion」のキーボードは、 最上段左端に「MAR REL」キーが、最上段右端に「BACK SPACE」キーが移されていて、「TAB」キーはありません。
上の広告の直後、ロイヤル・タイプライター社は、「Royal Quiet De Luxe」「Royal Aristocrat」「Royal Companion」の生産を停止します。日本軍がハワイ真珠湾(Pearl Harbor)を奇襲攻撃し、日米が開戦したからです。これに伴い、ロイヤル・タイプライター社は、民間向けタイプライターの生産を停止、軍需向けの「Royal Arrow Portable」の生産に注力することになりました。これに加え、愛国主義的な広告を打つことで、ロイヤル・タイプライター社は、アメリカの対日戦争を支えていったのです。