ま日(け)長く川に向き立ちありし袖(そで)今夜(こよひ)まかむと思はくのよさ
出典
万葉・一〇・二〇七三
訳
何日もの間、川に向かって立っていた妻の袖を今夜枕(まくら)にしようと思うことのうれしさよ。
注
「七夕(たなばた)」の歌で、彦星(ひこぼし)が織女星との逢瀬を詠んだ形。
(『三省堂 全訳読解古語辞典〔第四版〕』「思はく」)
今回は、七夕と「袖」に関わる歌を選びました。『三省堂 全訳読解古語辞典』では、七夕の習俗について、「あまのがは」「きかうでん(乞巧奠)」「たなばた」などの項目で詳しく解説されています。たとえば、「ほしあひ」を引くと、以下のようなコラムが載っています。
[読解のために]一年に一度、天空の出会い「星合ひ」
七月七日の七夕の夜、牽牛星と織女星が天の川を渡って、一年に一度の出会いをするという伝説が中国には古くからあった。この伝説は奈良時代になって日本に広まり、日本古来の棚機(たなばた)つ女(め)の信仰と結合して星祭りとなり、宮廷での行事の一つとなった。『万葉集』には二つの星の出会いに関する歌が多くみられ、巻八には、山上憶良(やまのうえのおくら)の七夕歌十二首がある。