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人名用漢字以外を子供の名づけに使うには (3)

2009年 5月 18日 月曜日 筆者: 安岡 孝一

人名用漢字の新字旧字・特別編 (第3回)

人名用漢字の新字旧字「曽」「祷」の回を読んだ方々から、常用漢字でも人名用漢字でもない漢字を子供に名づけたいのだが、どうしたらいいのか、という相談を受けました。それがどれだけ大変なことかを知っていただくためにも、あえて逆説的に、「人名用漢字以外の漢字を子供の名づけに使う方法」を、全10回連載で書き記すことにいたします。

戸籍法と戸籍法施行規則

戸籍法第50条は、子供の名づけに使える文字を、以下のように規定しています。

第五十条    子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
2    常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。

戸籍法施行規則第60条では、子供の名づけに使える文字を、以下のように制限しています。

第六十条    戸籍法第五十条第二項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
   常用漢字表(昭和五十六年内閣告示第一号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
   別表第二に掲げる漢字
   片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)

つまり、法律である戸籍法が「常用平易」という大枠を決めて、法務省令の戸籍法施行規則が、それを常用漢字と「別表第二に掲げる漢字」(人名用漢字)に制限している、という二段構えになっています。

しかも、この二段構えには、実は隙間があります。「常用平易」であるにもかかわらず、常用漢字でも人名用漢字でもない漢字、というのが存在し得るからです。言い換えると、常用漢字でも人名用漢字でもない漢字であっても、戸籍法に沿って「常用平易」であると認められれば、子供の名づけに使ってよい、ということになるのです。ただし、そういう漢字を子供の名づけに認めてもらうためには、行政の場である市役所(区役所・町役場・村役場)ではなく、司法の場である裁判所の判断が必要なのです。では、どこの裁判所に行けばいいのでしょう。

家庭裁判所に不服を申立てる

戸籍に関する事件は、家庭裁判所の家事審判にあたります。地域(市役所の住所地)を管轄する家庭裁判所を調べて、そこの家事審判に関する手続案内窓口に出向きましょう。「市町村長が出生届を受理してくれなかったので不服を申立てたい」というのが、あなたの家事審判の概要ということになりますので、申立てに必要な書類やその書き方について、窓口で相談しましょう。申立てに必要な費用(通常は収入印紙800円分)と予納する郵便切手(審判書などを郵送してもらう)についても、その時に相談しておくといいでしょう。

申立てに必要な書類などが準備できたら、家事審判申立書を書くことになります。申立書の『事件名』は通常「市町村長の処分に対する不服」になります。『申立ての趣旨』は、端的には「市町村長が出生届を受理するよう審判を求める」という内容になるはずです。問題は『申立ての実情』ですが、これは、次回(第4回)にいたしましょう。


【筆者プロフィール】
安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター准教授。
京都大学博士(工学)。JIS X 0213の制定および改正で委員を務め、その際に人名用漢字の新字旧字を徹底調査するハメになった。著書に『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)、『文字コードの世界』(東京電機大学出版局)、『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。
http://slashdot.jp/~yasuoka/journal で、断続的に「日記」を更新中。

2009年 5月 18日