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地域語の経済と社会 第108回

2010年 7月 17日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第108回 大分のローカルヒーロー「PCO」

 現在、全国各地で、地域にねざしたローカルヒーローが登場し、祭りやイベントなどに出演して地元の人たちに愛され、活躍しています。(この連載シリーズの第26回「方言キャラクター」も参照)

 大分にも「パワーシティオーイタ」(略称、PCO)というローカルヒーローがおり、その仲間やライバル(敵)などとしてすでに40体を制作。その中には方言で名前がつけられたキャラクターもいます。

【写真1】パワーシティオーイタ
【写真1】パワーシティオーイタ

 このPCOを生み出したのは、H.A.C.(HEROS ATTRACTION CREATIVE)というグループで、2000年にヒーロー好きのメンバーが集まって発足しました。
 キャラクターショーを中心とした様々なボランティア活動を展開し、「元気ある大分」をアピールしようと活動しています。

 主なキャラクターと、大分の方言にちなんだ名前の登場人物や技などを挙げましょう。

 ホームページによると「PCOは、大分を愛するみんなの心が集まって発生したエネルギー体「キョードアイ」が大分の為に頑張る人に宿り誕生したスーパーヒーローで、必殺技の「真羅神拳(しらしんけん)」は大分のみんなの「しらしんけん」な心を体に集中させて敵に叩き込む。大分の平和を乱すどんな困難な敵も打ち砕く」とあります。
 「しらしんけん」は大分の方言で、〔一生懸命に〕の意味で広く使われています。

【写真2】敵役のダークシティオーイタ
【写真2】敵役のダークシティオーイタ

 PCOの最大の敵、永遠のライバルは、大分の悪い心が合体して誕生した「ダークシティオーイタ」(略称、DCO)で、大分の特産物をダークチェンジさせることで怪人に変えてしまい(例:後述のカサワクドン)、大分を悪の心で満たそうとたくらんでいます。

 「蒼邪拳(そうじゃけん)」は彼の繰り出す必殺技。PCOの真羅神拳に匹敵する非常に強力なパワーを持っています。「そうじゃけん」〔そうだから〕という大分弁に由来します。

 悪役の1人「ジョーカーレイ」が繰り出す光線技が「EBC(イービーシー)」で、大分弁の「いびしい」〔古語「いぶせし」の変化した語。気味が悪い、ゾッとする、汚らしい〕にちなんでの命名。EBCとはイビル・ブースト・セルの略で、悪意増幅細胞(あくいぞうふくさいぼう)という細胞を敵に植え込み「悪い心」にさせるという恐ろしい技です。

 「ハニーレディオーイタ」は、PCOの仲間のヒロインです。その得意技は「レディシャーネンカー」で、大分弁の「しゃーねーんか」〔仕方ないのか〕に由来し、傷ついた体や体力を回復させる能力を持っています。

【写真3】ショックン(左)とパックン(右)
【写真3】ショックン(左)とパックン(右)
(以上、写真提供:H.A.C.)

 大分の(自称)ヒーローに「ショックン」と「パックン」がいます。田舎から出てきたカエルタイプの2人組で、大分弁でカエルを意味する「ショックン、バックン」に由来します。(方言ではバックン(Ba-)ですが、ヒーローの名前はパックン(Pa-)です)

 その他にも、悪役に「カサワクドン」がいますが、実は先のパックンがダークシティオーイタの手によって怪人に変えられた姿です。
 カサワクドンは、大分弁の〔ヒキガエル〕を意味する「カサワクド」に由来します。
 シイタケ怪人「ナバロン」は、大分の名産〔しいたけ〕の方言「ナバ」に由来します。

 こんなふうに、地元・大分の方言にちなんで命名することによって、見る人たちに、よりいっそう親近感を持ってもらいたいという、H.A.C.のメンバーの思いが伝わってきます。

《参考》「パワーシティオーイタ」の公式ホームページは、http://pcoxhac.web.fc2.com/
NHK大分放送局のテレビ番組「ししまるテレビ」(平成22年2月5日(金)放送)の中で、PCOのファンの子供たちが、ショーに出てくるキャラクターや技の名前で大分の方言を知り、方言を見直すきっかけになっていることが紹介されました。
※ 実は「ししまるテレビ」は「んけん、まるごと、大分を取り上げるテレビ」という番組のねらいを縮めた語だそうで、これも方言にちなんだ命名です。
 また『大分合同新聞』平成22年3月20日(土)夕刊1面でも、PCOのことが大きく取り上げられました。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2010年 7月 17日