地域語の経済と社会 第151回 東日本大震災の被害
2011年 5月 21日 土曜日 筆者: 田中 宣廣地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第151回「東日本大震災の被害」
3月11日の東日本大震災により,たいへん悲しいことながら,これまで紹介してきた,方言の有効活用例や関連企業などに大きな被害が出ました。今回は,その報告をします。
第131回の「とびゃっこメモ帳」を発行していた岩手県陸前高田市のタクミ印刷は,本社を失いました【写真1】。
津波の後の陸前高田市中心部の壊滅状況をテレビ等でご覧になった人も多いと思います。同社の本社はその中央部にありました。社員の皆さまは全員無事であったことが,インターネット情報やテレビ報道で伝えられました。
第101回「『市』を挙げての方言メッセージ~『おおきに』と『おでんせ』」の岩手県宮古市役所前庭の「おおきにとおでんせ」のポールは,無惨になぎ倒されました【写真2】。
方言メッセージの書かれた面は,ほんのわずか残りました【写真3】。
市役所本館は,津波が直撃して大きく損傷しました【写真4】。宮古市役所は,第121回「かだる」で紹介した「宮古゛さ かだれんせ」の山車を出したところでもあります。
第46回「『かきくけこ』―5文字で完結する観光の方言メッセージ―」の岩手県山田町は,津波で町の中心部が壊滅したあと,火災も発生し,まさに焼け野原となってしまいました。牡蠣祭りの開催場所である魚市場は,海に面しているため大破しました。歓迎の方言メッセージを掲げていたJR山田線「陸中山田」駅は焼失し,方言メッセージも灰燼に帰しました【写真5】【写真6】。


左:【写真5 陸中山田駅の惨状(筆者撮影;①印が第46回の【写真4】の看板のあった位置)】
(クリックで周辺の様子も拡大表示します)
右:【写真6 陸中山田駅駅舎(筆者撮影;②印が第46回の【写真5】の横断幕のあった位置)】
これまでの紹介にはないものですが,陸中山田駅近くの飲食店のネーミング袖看板「おでんせ」【写真7】も火災で焼失しました。残念ながら,この写真が貴重な記録となってしまいました。
ところで,震災からこの地方の復興が成し得たと言えるのはどの時点なのでしょうか? 私は,とびゃっこメモ帳の続きが発行されたり,失われた方言メッセージが戻ったときが一つの節目かと思います。
例えば,駅の歓迎メッセージなら,町を再建する位置が決まって,町が出来,それに合わせて駅や線路を新たに造り,それが完成してから掲げられるからです。
つまり,方言の有効活用例の復活のは,震災からの復興に大きな意味を持つのです。その実現を確信して再建の原動力としたいと思います。全国の皆さんもぜひ応援してください。
なお,第146回で紹介した復興の方言メッセージは,その後さらに増えています。それらは第156回で報告する予定です。
* * *
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
田中宣廣(たなか・のぶひろ)
岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。
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2011年 5月 21日











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