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三省堂辞書の歩み クラウン英和辞典

2016年 9月 7日 水曜日 筆者: 境田 稔信

三省堂辞書の歩み 第52回

クラウン英和辞典

昭和14年(1939)3月30日刊行
三省堂編輯所編纂/本文1380頁/菊判(縦195mm)

左・中央:【クラウン英和辞典】修正100版(昭和16年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)

 本書は、昭和10年刊行の『学生英和辞典』の姉妹編にあたる。前書は旧制中学の2、3年生程度までが対象だったが、本書は全5学年を対象としたものである。巻末附録には「和英辞典」74頁があった。初年級の生徒にとっては大部で扱いにくくなる不便に配慮し、「英和和英小辞典」(600語)が別冊で付けられた。

 収録語数は、『学生英和辞典』の9650から3倍近い2万8050に増え、理解を助ける写真や図版を2560点掲載している。用例・文例は、教科書に出てくるものはもちろん、英米各種の辞書類からも補われた。

 語釈は漢字ひらがな交じり文で、口語体である。用例や和訳は適宜改行され、読みやすくなっている。

 「クラウン」の名称は、当時出版されていた三省堂の英語教科書『The New King’s Crown Readers』などに由来する。三省堂は、前年の昭和13年に中学教科書の売上げ第1位を達成していた。そして、戦後から現在に至るまで、英語の教科書とともに「クラウン」シリーズが発売され続けているのである。

『新クラウン英和辞典』昭和29年初版(1954)
『初級クラウン英和辞典』昭和34年初版(1959)
『カレッジクラウン英和辞典』昭和39年初版(1964)
『新クラウン英語熟語辞典』昭和40年初版(1965)
『新クラウン基本英語熟語辞典』昭和43年初版(1968)
『学習クラウン英和辞典』昭和49年初版(1974)
『キッズクラウン英和辞典』平成15年初版(2003)
『中学カラークラウン英和辞典』平成15年初版(2003)
『エースクラウン英和辞典』平成21年初版(2009)

●最終項目(画像はクリックで拡大)

Zutphen〔zútfən〕【名】オランダ中央東部に在る都会.1586年英軍とイスパニヤ軍とが戦つた古戦場.

●「猫」の項目(画像はクリックで拡大)

cat〔kæt〕【名】猫.
  A cat may look at the king.
  猫だつて王様を見られる(卑賤の身にも幾分のチャンスはある).(諺)
  A cat has nine lives.
  猫には九つの命がある(中々死なぬ).(諺)
  Care killed the cat.
  心配事は(九生ある)猫さへも殺した(心配は身の大毒).(諺)
  It rains cats and dogs.
  土砂降りに雨が降る.
  When the cat’s away the mice will play.
  猫の留守に鼠は遊ぶ(鬼のゐない間に洗濯).(諺)
cat and dog 仲の悪い者同志.――lead(or live)a cat-and-dog life, live like cat and dog 猫と犬の様に仲の悪い生活をする,いがみ合つてばかりゐる.
bell the cat ☞bell.

●「犬」の項目(画像はクリックで拡大)

dog〔dɔɡ〕【名】①犬.
  Every dog has his day.
  誰にも盛りの時はある.(諺)
 ②やくざ者;けしからぬ人間.
 ③(dogs)=fire-dogs.
die a dog’s death 哀れな(見苦しい)死に方をする.give(or throwto the dogs 棄てる.
go to the dogs 零落する.
lead a dog’s life 惨めな(苦労の多い)生活をする.
lead one a dog’s life 人に惨めな生活をさせる(苦労をかける).
rain cats and dogs 雨が土砂降りに降る.
【動】(犬の様に)後をつける,追跡する;くつついて来る.――dog a thief’s footsteps 泥棒の足跡をつけてゆく.

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◆この連載のほかの回をお読みになる方は⇒「三省堂辞書の歩み」目次へ

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【筆者プロフィール】

境田稔信(さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

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【編集部から】

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2または第3水曜日の公開を予定しております。

2016年 9月 7日