編集部の新連載「辞書編集者のひとりごと」が始まります。このコラムでは、辞書編集部のメンバーがことばについて日頃思っていることや辞書に関する Tips を「ひとりごと」として綴っていきます。
今はちょうど春の新学期シーズンということで、第1回は「春から新しい語学を始めたい」、「大学の第二外国語は何にしよう」……そんな人のために、辞書編集者が人気の第二外国語とそのおすすめの辞書・教材を4回に分けて紹介します。
中国語は中国、香港、マカオ、台湾、シンガポールをはじめとして、世界中の華僑によって話されており、世界で最も使用人口の多い言語と言われています。漢人・華僑が話す言語には多種多様な方言がありますが、ここでいう中国語は北方方言を基本とした標準語(北京語)のことです。
漢字で表記されるため日本人にとっては親しみやすいと言えますが、中国では「簡体字」という簡略化された漢字が使われていて、見ただけではわからない文字も少なくありません。例えば「长」(長)、「夺」(奪)、「电」(電)、「认」(認)などです。慣れるまでは少し大変ですが、わかる漢字が少しずつ増えていくのも面白いものです。
学習の楽しいところ
日本語と字形が同じで意味が全く違う語があり、驚かされます。例えば「手纸」(トイレットペーパー)、「老婆」(妻)、「床」(ベッド)、「走」(歩く)などです。日本語とは違う言語なんだと実感する瞬間です。
また、個々の漢字の発音を覚えていくに連れ、身の回りにある漢字を中国語で発音するという密かな楽しみ(?)も生まれます。例えば苗字、「山田」さんなら「シャンティエン」、「小川」さんなら「シャオチュワン」。地名では「東京」なら「トンチン」、「奈良」なら「ナイリャン」。
言葉と一緒に中国文化に触れていくのも学習の醍醐味です。例えば旧正月に立派な魚の絵が飾られるのは、「魚」が「余」と同じ音で「年年有余」(毎年余裕がある)を意味するから。また中秋の節句に食べる本場の月餅は日本の菓子メーカーが作っているものよりずっと大きく、中に卵の黄身が丸ごと入っていたりします。さらに伝統楽器の二胡(胡弓)が奏でる哀愁を帯びた音色は人間の声に近いと言われていること、などなど…。これらの発見は中国語の学びをより深めてくれます。
学習の難しいところ
多くの学習者が苦労するのは発音です。
まずは日本語にはない「声調」(音の高さ)があること。「妈(お母さん)、麻(植物のアサ)、马(馬)、骂(ののしる)」はすべてma(マー)と発音されますが、これらは4種類の音の高さで区別されます。
また、そり舌音(舌をそり上げて出す音)など日本語にはない音がいくつかあります。
さらに、漢字の発音を表す「ピンイン」というあるアルファベット表記が独特で、必ずしもローマ字読みできるとは限りません。例えば「nian」は「ニエン」、「si」は「スー」、「xi」は「シー」と読みます。
ただし中国語には語形変化(例えば英語のgo、went、gone)がないため、その点は負担が少ないと言えます。
辞書・教材の選び方
●初級学習辞典
初めて中国語を学ぶ人が楽しく学べるよう、様々に工夫された辞書です。
発音については、すべての親字にカナ発音が付いているほか、ウェブサイトで音声が聞ける解説「中国語の発音」があります。
微妙に字形が異なる日本語と中国語の漢字を並べた「日中字体比較」や日本人には難しい「簡体字の書き順」、さまざまな文化や文法などをわかりやすく解説する「コラム」も人気です。
同じ内容で文字の大きな「並版(B6変形判)」と携帯性にすぐれた「小型版(A6変形判)」とがあります。
●学習辞典
幅広いレベルの学習者のための中日辞典です。
語釈はわかりやすくて読みやすく、学習に役立つ用例が豊富です。[表現][比較][由来]などの参考情報をふんだんに盛り込み、筆順の難しい親字には筆順表示を付けました。
調べたい漢字を探す手段として「部首索引」「総画索引」の他、「日本語音訓索引」もあります。
辞書の使い方が一目でわかる「引き方ヘルプ」も参考になります。
『クラウン中日辞典』の上級版として『超級クラウン中日辞典』もあります。
●ハンディな辞典
カバンに入れてもかさばらない、持ち運びに便利な辞書です。シンプルな語釈に簡潔な用例で中日は親字約1万、総収録項目数4万1千、日中は見出し語2万8千、用例2万2千。日中は見出し語の訳語と用例のすべてにピンイン付きです。
※装丁がおしゃれな「プレミアム版」もあります。
※合体版だけでなく、『中日辞典』単体、『日中辞典』単体もあります。
●単語帳
「中検」の3つの級に対応した単語帳シリーズです。実際の試験問題5年分を徹底分析、頻出単語を網羅しました。大活字のシンプルなレイアウト、発信力がつく「語の組み合わせ」重視の用例で好評です。すべての見出し語、訳語、中国語用例を収録したCD付きです。