方言を生かしたみやげものは、海外にもあります。海外旅行のついでにみやげもの店など丹念に回ると見つかります。
ドイツに行ったときにケルンに寄りました。駅のすぐ横が壮大なケルン大聖堂ですが、そこからすぐの観光案内所のショー・ウインドーを数人が見ながら笑い合っています。見ると商品がたくさん飾ってあって、ドイツ語らしい文が書いてあります。意味が分からないので聞いてみたら、ケルンの方言だと言って、英語になおしてくれました。「なるようになる」という意味のようです。昔の歌を思い出して、「ケセラセラ、なるようになる」と口ずさんで、その意味かと尋ねたら、相手も同じ年代、そのとおりの意味だと言って、一緒に合唱しそうな勢いです。
彼らが買わずに帰ったあと、じっくり見たら、ショー・ウインドーのかたわらにちゃんと標準ドイツ語と英語の訳が書いてありました。写真を撮り、傘やバッグだからかさばるという理由をつけて、買うのをやめました。売り上げには貢献しなかったわけです。2004年のことです。1990年にはなかったので、ドイツでは方言みやげが人気を呼ぶようになったのでしょうか。
英語の方言みやげも、いろいろあります。1990年ころのイギリスだと、北部・中部の都市で見つかりました。2008年にヨークに行ったときには、みやげもの屋で聞きましたが、見つかりませんでした。2000年ころのアメリカ南部では、南部なまりについての観光客向けの本が空港などで売られていました。オーストラリアではオージー英語の本や絵はがきや筆立てなど、様々なものが売られています。南太平洋の英語を使う島々でも売っていることがあります。
どれが方言を使ったみやげなのかは、その言語を知らないと分かりません。店員に聞くのがいいでしょう。イギリスの店員は熱心に探してくれたので、最初は感激していましたが、あとで売り上げを増やすためなら当然だと、人に言われて、感激しないことにしました。感謝はしますが。
イタリアでは現地生活の長い人が方言カレンダーを探しあてて送ってくれました。しかしこれまで世界50カ国ほどを訪れましたが、方言みやげの見つかった国は、欧米の数カ国にすぎません。アジアでは気づきませんでした(でも見逃しもあるでしょう。教えていただけたら幸いです)。方言についての国民の意識が違うのでしょう。また観光客の関心にも差がありそうです。文字で細かい発音を表せるかという違いもあります。方言が言語経済学的に価値を持つかどうかは、簡単には定まらないようです。
なお外国の方言みやげについては、以下の本にも載っています。