大阪でミニカステラまんじゅうを見つけました。第52回でふれた京都のものと、大きさが似ているし、1個1個に焼印で記してある方言があいさつことばなのも似ています。文字は「おおきに」「まいど」「せやけど」「すんまへん」で【写真1】、包み紙には「おおきに」と「まいど」しか書いてないので【写真2】、買って、写真を撮って記録に残しました。実物は結局食べてしまいました。味も京都のと似ていました。
(画像はクリックで拡大します)
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大阪では、もっと大きいカステラまんじゅうも見つけました。包み紙には13個の表現が書いてありますが【写真3】、いずれも会話で使われる言い回しです。しかし実物の焼印の文字は細かくて【写真4】、字がつぶれています。右の4行は「さよか」「どないやねん」「たのむわー」「まけてんか」です。左の3行はデジカメ写真を拡大して、「どやろー」「もうかりまっかー」「ぼちぼちでんな」と読み取りました。いずれも店でのやりとりの言い方ですが、包み紙とは違うことばですから、実物の保存がぜひ必要です。しかし写真に撮ったあと、これが究極の方言みやげ保存法なのだと自分に言い聞かせながら、お腹に収めました。何しろ体細胞の一部に変化させるわけですから。
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(右は一部の拡大)
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第52回でふれた京都のミニカステラも合わせて、三つのお菓子の方言がいずれもあいさつなどの表現なのは、意味がありそうです。京都・大阪の方言みやげには、「おおきに」や「まいど」はじめ、人とのやりとりで使われるあいさつことばがよく表れます。しかしほかの地域の方言みやげでは、むしろモノや動作や感じを表わすことばが、多いようです。京都の人あしらい、大阪のボケとツッコミなど、会話の進め方に気を使うのが、関西人です。さあ、方言みやげに取り上げられることばに、全国的な違いはあるでしょうか。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。