第35回の紹介後、長野県内の方言かるたに新たな3種が加わりました。
①りんご丸の信州方言かるた
長野朝日放送が、信州の方言を使った読み札を公募。監修は、長野県方言研究の泰斗・馬瀬良雄氏(信州大学名誉教授)。同局アナウンサーが読み手となったCD付きです。
ご覧のように、同局のイメージ・キャラクター「りんご丸」があしらわれたデザインです。制作に関わるお話をおたずねしてみました。
●信州の方言をモチーフにかるたを制作された意図は?
信州の方言がわからない子供がたくさんいるという近頃、世代を超えて信州の文化や風習を学び、共通語では決して伝わらない信州の方言ならではの魅力を伝えていきたい。との思いからです。
●制作にあたって、苦労した点、工夫されたところは?
長野県は面積が広いため、方言も地域ごとにさまざまであり、全県の人がわかるような方言を選ぶと同時に、地域特性のある方言については、地域が偏らないようにするなど工夫しました。
また、すべての文字を方言で始まるようにしたので、方言が当てはまりにくい場合もあり、あまり馴染みのない方言を使わざるを得ない例もありました。
ほかに、方言にあった面白くかわいい絵をあわせるのにも力を入れました。
●販売後の反響はいかがですか?
県内大手の書店やコンビ二、幼稚園などからの反響が良く、問い合わせも多数いただいています。
なお、大牟田市立三池カルタ・歴史資料館(福岡県)に寄贈したので、長野県以外の地域でも機会あるごとに展示公開されています。
②祢津(ねつ)方言カルタ おらほ
長野県の東部地域にある東御(とうみ)市の祢津地区活性化研究委員会が、祢津小学校児童の協力を得て制作。同委員会は、これまで方言集『おらほ』(平成14年)、『地区の言い伝え』(平成16年)を刊行し、地区全戸に配布。方言や伝説などの伝承・保存に力を尽くしてきましたが、今回は、4年生の総合的な学習の時間の中で、カルタづくりに取り組んだ成果を披露することとなったものです。
制作には、長野県の「地域発元気づくり支援金」が活用され、平成22年度の優良事例として、先ごろ知事表彰されました。
③飯綱町方言かるたトランプ
ありそうでなかった方言トランプが第208回で、多数紹介されましたが、これもその一例になるものです。
長野県北部の飯綱町の方言を素材にしたものです。箱絵の説明に、「方言カルタができます。トランプができます」とあるように、一組で二つの役割を果たします。
ところで、トランプは53枚、かるたはふつう44枚と、枚数にズレが出ますが、このかるたでは、濁音(13音)と撥音(1音)を積極活用。
があたく坊主[=いたずら坊主] ずくをだせ[=やる気をだせ]
びしょってない[=みすぼらしい] んにゃ、なーしてだ[=いや、どうしてだ]
など、特徴的な語彙を挙げ、これによって、ズレを埋める工夫をしています。
一方、単語の見つけにくいラ行(5音)は、読み札を作らない割り切りと、JOKERの札は、
ばばい よて[=汚い てぬぐい]
という遊び心も見せています。
制作過程や形態に、また新種があらわれました。次は、どんなものが登場するやら、楽しみなところです。
なお、第33回で、全国のかるたのホームページにリンクがはられています。