« 明日は何の日:11月23日 - 明日は何の日:11月24日 »

地域語の経済と社会 第24回

2008年 11月 22日 土曜日 筆者: 山下 暁美

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第24回「京都ことばはノリノリどすえ!!」

 京都ことばの現在を3つの観点から見てみることにします。

【京人形のショーケース】
【写真1 京人形のショーケース】
(クリックで拡大します)
【祇園の4か国語表示】
【写真2 祇園の4か国語表示】
【歩行者専用道路標示】
【写真3 歩行者専用道路標示】

 まず、第一は、商品としての京都ことばの共通語化です。京人形もそれを反映してか、ショーケースに昔ながらの「おこしやす」という人形と、「新いらっしゃいませ」という人形が並べられています【写真1 京人形のショーケース】。店員さんは「いらっしゃいませ」とお客に声をかけていて、「おいでやす」「おこしやす」などは少数になりました。また、「舞妓はん」と「舞妓さん」も「はん」から「さん」に移行しています。「舞妓はん」と「舞妓さん」と表示された別々の油取り紙が、狭い棚に並んでいます。

 第二番目は、京都ことばが地域的な広がりのある商品に登場していることです。寺町通りに行くと、ストラップやお菓子に「関西限定」「近畿地区限定」と表示された商品が売られています。「めっさ!! うまい」「ノリノリどすえ」「グーどすえ」など若者ことばや外来語を京都ことばと組み合わせてうまく使っています。京都ことばは京都だけという従来の発想から抜け出して、地域的な広がりを持たせたうえに、若者言葉、外来語とのコンビネーションですから、“今様京都ことば”といえます。

 第三番目は、京都ことばの国際化についてです。例えば、祇園で4か国語の多言語表示を見かけました【写真2 祇園の4か国語表示】。ほかの3言語の上に書かれている日本語は共通語ではなく、京都ことばです。日本の都市では多言語表示をよく見かけるようになりましたが、日本語はたいてい共通語表示になっています。他の言語の中で活躍する京都ことばの例です。

【先斗町のれん会の吸殻入れ】
【写真4 先斗町のれん会の吸殻入れ】

 京都では、平成17年に年間「観光客5000万人構想」を宣言しました。先斗町へ行ってみると、「自転車、バイクは押して通っておくれやす」【写真3 歩行者専用道路標示】、「歩きたばこはやめておくれやす」【写真4 先斗町のれん会の吸殻入れ】など、公共のマナー向上に方言が使用されています。先斗町の狭い通りは、外国人もよく訪れる通りですから京都ことばでマナー向上を訴えるのは効果的でしょう。

 新京極には、かつて京みやげの店がずらりと並んで、みやげには京都ことばがたくさん見られました。そして、お香が香り、邦楽の音がどこからともなく聞こえていました。

 現在は、少なくなりましたが、一方で広域商品での使用、多言語表示、公共マナー表示等に多様に使用されていて、京都ことばは“ノリノリどすえ!!”

* * *

◆この連載を続けてお読みになる方は
「地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―」アーカイブへ

◆記事のタイトルからお探しになる方は
「地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―」目次へ

【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』山下暁美(やました・あけみ)
明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。博士(学術)。
専門は、日本語教育学・社会言語学。研究テーマは、移民百年を迎えた、ブラジル、アメリカ合衆国などにおける日本語の変化、外国人の日本定住化による共生時代の日本語教育政策。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

* * *

【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

* * *

この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

2008年 11月 22日