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地域語の経済と社会 第64回

2009年 9月 5日 土曜日 筆者: 山下 暁美

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第64回「もてなしの方言(南東北地方)」

(写真はクリックで拡大します)
【写真1】【写真2】
左:【写真1】 右:【写真2】

 今回は、南東北地方(福島県、山形県、宮城県)のもてなしの方言をとりあげます。

 福島駅構内には、「コラッセふくしま」【写真1】というショッピングセンターがあります。「こらっせ」については、第13回でさらに詳しくとりあげられています。福島市から南東に約20キロ足をのばすと「しみもち」がおいしい川俣に着きます。道の駅には、「こらんしょ川俣」【写真2】と書かれた、からりこフェスティバルのポスターが貼られています。「こらっせ」と「こらんしょ」、どちらも「いらっしゃい」の意味ですが、「こらっせ」は、同僚や友達に、「こらんしょ」は、目上に用いられ、「こらんしょ」のほうが「こらっせ」より新しい形とされています。古くは、「こっせ」という言い方があったそうです。

【写真3】
【写真3】
【写真4】
【写真4】
【写真5】
【写真5】

 「ゴジャーレ」(いらっしゃい【写真3】)と大きく地域の宣伝をしているのは、山形県村山市です。「ござる」(「御座ある」の縮約形、「行く」・「来る」の尊敬語)が「ござれ」(命令形)になって「ゴジャーレ」と変化したのです。「ござる」(尊敬語)は、山形県、宮城県、福島沿岸地方と、以南の日本海側を中心に広く分布しています。

 宮城県登米市には、「登米の街へ“ほっ”としに来てけらぃん」【写真4】というもてなしの言葉があります。「けらぃん」は、「くださいね・ちょうだいね」という意味です。「けらい」が元の形で、「けらぃん」は、やさしさをこめた表現です。白石市には、もてなしの言葉で「よーぐござったない」(ようこそおいでくださいましたね【写真5】)があります。「な」の変化した形「ない」がついています。「~ぃん」も「~ない」もやさしさの表現です。

 紙面の都合でご紹介できなかった写真資料は、「遊びに来てけやれ!!」(福島県南会津町)、「よらんしょ! こらんしょ! 喜多方へ」(会津若松市)、「来てみらんしょ 居てみらんしょ 住んでみらんしょ」(会津若松市)、「よってがんしょ」(西会津町)、「こらんしょ横丁」(福島市)、「んめぇ! おもしぇ! ござへぇ! 庄内」(山形県庄内町)、「よぐござったなぁ。ありがどさま~。」(最上郡)、「あがらっしゃれ」(新庄市)、「庄内ってこげだんよ」(庄内)、「よぐござったなぁ。ありがどさま~。」(最上郡)です。

もてなしの方言(南東北地方)
写真1 こらっせ 福島市 福島県
写真2 こらんしょ 川俣市
写真3 ごじゃーれ 村山市 山形県
写真4 来てけらぃん 登米市 宮城県
写真5 よーぐござったない 白石市
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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』山下暁美(やました・あけみ)
明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。博士(学術)。
専門は、日本語教育学・社会言語学。研究テーマは、移民百年を迎えた、ブラジル、アメリカ合衆国などにおける日本語の変化、外国人の日本定住化による共生時代の日本語教育政策。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2009年 9月 5日