ドイツのハーブ―ウイキョウ―
2010年 2月 1日 月曜日 筆者: 石井 正人クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(78)
においがなじめないといえば、Lakritze「カンゾウ(甘草)」と並んで、Fenchel「ウイキョウ(茴香)」がある。
ドイツのスーパーマーケットでは、様々な種類のKräutertee「ハーブティー」が並んでいる。伝統の漢方薬や薬湯というわけだ。Pfefferminze「ペパーミント」やHagebutte「野バラ」やKamille「カミツレ(カモミール)」やEibisch「ハイビスカス」のお茶などは珍しくもないが、さらにこれを様々にブレンドして、「こども茶」だの「腎臓茶」だの「おはよう茶」「おやすみ茶」などと称して、様々に特別な薬効をうたうものがある。ノーベル賞作家Günter Grassグラスの『はてしなき荒野』で主人公の老妻が愛飲しているのがこの「腎臓茶」である。
このようなハーブティー中にFenchelのお茶があって、Teebeutel「ティーバック」の箱の封を切っただけで、咳き込むほどのにおいがする。英語でフェンネル、あるいはキャラウェイと呼ばれているものと同じで、御存知の方もあるだろう。しかしウイキョウやキャラウェイと言われてもピンと来ない向きには、要するにSellerie「セロリ」の種であると言えば、風味に想像がつくだろう。
セロリの強い独特の風味も好き好きだが、あれが種になって凝縮している。セロリはもともとセリ(芹)の仲間だそうで、そう言われればにおいが似ていなくもないが、セリのあえかな風味をあっさりした和食に仕立てたものと比べると、セロリの強烈さは同日の談ではない。因みにドイツで普通に見かけるセロリは、葉や茎ではなく、カボチャほどもあるKnolle「球根」を食べる種類である。日本のものよりにおいがもっときつく、ドイツ人でも食べられない人がいるようだ。
しかしFenchelも、香料としては肉のにおい消しとか、Roggenbrot「ライ麦パン」と相性が良かったり、Sauerkraut「ザウアークラウト(酢漬けキャベツ)」の煮物には薬味として欠かせない。Mohn「ケシの実」やSesam「ゴマ」と同じことで、料理やパンや焼き菓子に少量使う分には、Fenchelもちょっと変わった印象的な香料ですむ。だがお茶だといって煎じるとすごいことになる。「ウイキョウ(茴香)」と言えば日本ではそもそもまた漢方薬だから、そう言われて日本人なら何となく納得する、独特の臭さになるのだ。
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【筆者プロフィール】
石井 正人(いしい・まさと)
千葉大学教授
専門はドイツ語史
『クラウン独和第4版』編修委員
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【編集部から】
2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。







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