「Smith Premier No.4」は、スミス(Lyman Cornelius Smith)率いるスミス・プレミア・タイプライター社が、1895年に製造・販売を開始したタイプライターです。「Smith Premier Typewriter」を改良するにあたって、スミス・プレミア・タイプライター社は3つのモデルを同時に発売しました。それらのうち、プラテン幅が7¾インチで、キー数が84個のモデルが「Smith Premier No.4」だったのです。
「Smith Premier No.4」は、大文字も小文字も数字も記号も、全て一打で打つことができる、という点を売りにしていました。84本の活字棒(type bar)は、プラテンの下に円形にぐるりと配置されていて、キーボードの各キーにそれぞれ対応しています。各キーを押すと、対応する活字棒が跳ね上がってきて、プラテンの下に置かれた紙の下側に印字がおこなわれます。プラテンの下の印字面は、そのままの状態ではオペレータから見えず、プラテンを持ち上げるか、さもなくば数行分改行してから、やっと印字結果を見ることができるのです。「Smith Premier No.4」は、いわゆるアップストライク式タイプライターで、印字の瞬間には、印字された文字を見ることができなかったのです。
「Smith Premier No.4」のキーボードは、84字が12字×7段で収録されており、大文字小文字が、全て別々のキーに配置されています。標準のキー配列では、キーボードの最上段は˚*+=/()%@¢!§と、その次の段は"QWERTYUIOP#と、その次の段は&ASDFGHJKL:$と、その次の段は2ZXCVBNM?_-6と、その次の段は3qwertyuiop7と、その次の段は4asdfghjkl;8と、最下段は5zxcvbnm,.'9と並んでいました。数字の「0」は大文字の「O」で、数字の「1」は大文字の「I」で、それぞれ代用することが想定されていたようです。
実のところ、スミスは「Smith Premier No.4」に満足していませんでした。「Daugherty Typewriter」のようなフロントストライク式タイプライターの開発に、挑戦したかったのです。しかし、スミス・プレミア・タイプライター社はユニオン・タイプライター社の配下にあり、そのようなタイプライターを開発する自由は無かったのです。結局、スミスは1903年にスピンアウトして、L・C・スミス&ブラザーズ・タイプライター社を設立し、そこで「L. C. Smith & Bros. Typewriter No.1」を開発することになるのです。