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地域語の経済と社会 第183回 「「けん」を競う大分の方言」

2012年 1月 7日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第183回 「「けん」を競う大分の方言」

【写真1】
【写真1『まっちょるけん おおいた』の冊子】
(大分空港で)(写真はクリックで拡大)

 大分県の観光情報を発信している「ツーリズムおおいた」(旧 大分県観光協会)では、大分空港開港40周年を記念し、空港の利用を促進するために、昨年=平成23年10月からことしの3月まで、多くの人たちにぜひ大分に来てほしい、実際に大分を回ってそのよさを知ってほしいというアピールのひとつとして、『まっちょるけん おおいた』という冊子を作ってキャンペーンを展開しています。

 「まっちょる」は〔待っている〕、「けん」は〔~から、~ので〕に当たり、〔(皆さんを)待っているので、(ぜひ)大分(県においでください)〕という意味ですが、「けん」はチケットの意味の〔券〕にもかけてあります。(第38回で紹介した福岡の乗車カード「はやかけん」も、〔早いから〕という意味と、チケットの〔券〕との掛けことばになっていました)

 表紙には「九州大分は意外に近い! 大分にしかない、大分だけの魅力がてんこ盛り。旅のプランはあなた次第。」とあり、裏表紙には命名の由来が……。「「けん」には、「大分県」の「県」と、クーポン券の「券」、そして「心を込めてお待ちしています」という「まっちょるけん」の意味合いが込められています」と述べられています。

 A5判30ページの冊子には、食事代や利用額が5%~10%OFFになったり、施設によっては入園料が20%OFFになったり、通常の宿泊料金から3150円引きの宿があったりと、活用するとお得なクーポン付き「まっちょる券」が55枚収録されています。

 同様な例として、平成21年には、大分市観光協会が『たべてみるけん いってみるけん おおいた虎の巻』という、小型の紹介冊子2冊を作っています。

 このうちの『食 たべてみるけん』の冊子には「大分ふぐ、関あじ・関さば、とり天… 大分ならではの味が楽しめる 全54店」の情報が、また『楽 いってみるけん』には「近場の穴場から県内各エリアまで 2時間~日帰りで行ける 全22コース」が紹介されており、この2冊が赤くて目立つ1つのケースに入れられています。

【写真2】
【写真2 NHK大分放送局のキャンペーンのロゴ】
(写真提供:NHK大分放送局)

 また、分野は違いますが、地域密着をめざすNHK大分放送局も、開局70周年記念のキャンペーンとして、平成23年4月から「しんけん 好きやけん おおいたけん」=〔本当にすきだから 大分県〕というキャッチフレーズで局としての姿勢と意気込みを表現し、「ぜひ大分放送局の作った番組を見てください」と呼びかけています。

 こちらは、「―けん、―けん、―けん」と、韻を踏んで「けん」の3段重ねになっています。
 「しんけん」は「しらしんけん、しゅらしんけん」が転じたもので、大分では〔非常に、本当に、一生懸命に〕の意味でいちばん広く使われている、強調のことばの代表例です。(第18回「大分国体と方言」第108回「大分のローカルヒーロー」も参照)

 このキャッチフレーズを活かし、「しんけん好きなもの」というテーマで県内の全18市町村を取材。各地域・各世代の人々やグループに数多く登場してもらい、番組と番組の間の短い時間を活用して、30秒の「ミニ番組」として放送しました。

 その多くは方言を交えながら自分たちの日頃の活動などを紹介。そして最後には「○○に来ちょくれ~」〔~に来てくださ~い〕とか、「□□を食べに来んかえ~」〔□□を食べに来ませんか~?〕といったお誘いやメッセージで結んでおり、実に1000人以上の人たちが画面に登場しているということです。

《参考》
①社団法人ツーリズムおおいたの『まっちょるけん おおいた』は、
http://www.visit-oita.jp/info/kamihanki/machoruken.htmlで、
②大分市観光協会の『おおいた虎の巻』は「パンフNavi」で見ることができます。http://www.pamph-navi.jp/art/view_dynamic/pdfView.php?src=pam10007694
また、③NHK大分放送局のホームページは http://www.nhk.or.jp/oita/を参照。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。
方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第178回 「方言ネクタイはいかが?」

2011年 11月 26日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第178回 「方言ネクタイはいかが?」

 男性のおしゃれで特に目立つのは、ネクタイでしょう。色・柄・デザイン・素材・大きさ(幅)などにその人のセンスや好みが表れますし、ずいぶん印象が違ってきます。

 ちょっと変わり種のネクタイとして、「方言」をあしらったものがあります。

(クリックで拡大表示します)
【写真1 金沢弁の方言ネクタイ3種】
【写真1 金沢弁の方言ネクタイ3種】

 以前(平成6年)、大阪なんばの高島屋デパートが、父の日のプレゼント用などにと、おもしろ企画として、大阪の名物=タコ焼きや、けつねうどん、通天閣、関西空港、などをデザインしたネクタイと並んで、「方言ネクタイ」を何種類も作って大変話題になったことがありました。(詳しくは、日本方言研究会編『方言の現在』所収の拙稿「方言の有効活用」を参照)

 おそらく全国的には同様な“ご当地ネクタイ”がいろいろ登場しているだろうと思いますが、そのひとつ、金沢の「方言ネクタイ」を手に入れました。

 パッと見ただけでは「方言」とは気づかないかもしれませんが、目を近づけてよ~く見てみると、次のような方言が実にたくさん、ネクタイの全面に斜めにびっしりと並んでおり、それに太字で書いた語が混じっていて、変化を付けるアクセントになっています。

あだける あてがいな あのおんね あらみち あんか
いーじー いかなてて いさどい いじっかしい
うつぶらいかく うまそい うら えびす えんじょもん
おいだすばせ おいね おゆるっしゅ かさだかな
がっぱになる かやる がんこ きときと きまっし … 

 このネクタイは、金沢美術工芸大学の視覚デザイン専攻の学生たちが、金沢をアピールしたいとデザインしたものだそうで(平成17年)、方言版(エンジ・紺の2色)の他に、友禅流し、加賀鳶、加賀野菜、石川県の地図を図案化したものなどもあり、全部で6種類、色違いを入れると合計13のバラエティーが作られたとのこと。

 正絹で2500円(+税)と手頃な価格設定もあって、地元の人たちにも、また観光客からも大変好評で、息長く売れ続けており、平成19年には第2弾も作られ、このときに方言版はピンク・紺・ダークグレーの3色に増えた由。

【写真2 金沢弁の方言リスト(77語を収録)】
【写真2 金沢弁の方言リスト(77語を収録)】

 方言ネクタイには、書かれている方言とその意味がわかりやすいように、大剣(幅の広いほう)の内側にポケットを付けて小さな「方言のリスト」を入れる心配りまでされています。

 それには「金沢弁―日本の共通語―English」の3つが対比されていて、「Let’s start step1 ア行」から「Finale! step7 ヤ行 so, you are a master of kanazawa dialect!!」まで、合計77語が紹介されています。
 裏表紙には、「Let’s spread kanazawa dialect over the world 金沢弁を世界中に広めよう!」とあります。

 その土地らしい名産品や、代表的な風景、建造物、食べ物などと並んで、地元の方言がネクタイに取り入れられ、それが男性の胸元を飾って地域PRの一助にもなっている……。
 考えると、ちょっと楽しい遊び心の表現になっています。

 

《参考》 『北国新聞』(平成17年12月3日朝刊)で、このネクタイのことが紹介されました。また、金沢の古書店「近八書房」のブログでも、この新聞記事と方言ネクタイが写真入りで紹介されています。http://chikahachi.exblog.jp/2585953/

情報提供:加藤和夫・金沢大学教授

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 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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地域語の経済と社会 第173回 高速道路のレストランに「佐賀弁クイズ」

2011年 10月 22日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第173回 高速道路のレストランに「佐賀弁クイズ」

 高速道路の要所要所には、長距離ドライバーのための休憩施設、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)があります。

(クリックで全体を表示します)
【写真1 佐賀弁の問題リスト】
【写真1 佐賀弁の問題リスト】

 長崎道の佐賀県金立(きんりゅう)サービスエリアの上り車線にあるレストランには、メニューと並んで地元の方言のリストが1枚、クイズ形式にして置いてあります。
 B5版サイズのシートの表には「佐賀弁」42語があげてあり、各語の(用法・ニュアンス付きの)正解は裏に書いてあります。

 1年ほど前から始めたのだそうですが、食べたいメニューを注文したあと、料理が出てくるまでの待ち時間を有効に利用してしばし楽しむことができるので、お客さんにも好評だとのこと。
 例えば、次のような問題があげられています。( ⇒ 答えは末尾に)

1 がばい  2 そーにゃ  3 ねずむ  11 ぬっ  14 あまくらかす 
18 あっちゃこし  20 まちなんか  29 つーつらつー  34 ととしか  39 いたちょこ 

 家族や仲間といっしょの場合には、テーブルの真ん中にこのリストを立て、かたや表の面にある各語の意味を予想して回答し、こなた裏面の正解を見ながら合否の判定をする、といった楽しみ方ができます。大勢いるときには、1人が出題して複数のメンバーが回答して得点を競うこともできます。正解にしろ不正解にしろ、けっこう盛り上がりそうです。

 サービスエリアは長距離ドライブの途中に立ち寄るのがふつうですから、遠くから来た人たちにとっては思いもよらない言い方やその正解に意表を突かれたり、予想もつかない難しさに立ち往生し、「遠くまで来たなぁ」という実感を覚えることがありそうです。
 一方、同じ県や比較的近くから来た人にとっても、自分の方言との思わぬ違いや微妙なズレを感じる場合もあるでしょうから、両者それぞれに楽しめます。

【写真2 裏面のその回答】
【写真2 裏面のその回答】

 たった1枚の「方言リスト」ですが、苦肉の珍回答や苦し紛れの迷回答に笑い興じたり、予想がつきかねお手上げ・降参の場合などもあって、そうこうするうちに時間が過ぎて、「お待たせしました。ご注文の品です」と、料理が運ばれてくるシーンが目に浮かびます。

答え:1 がばい(ものすごく)  2 そーにゃ(とても、大層な、ひどい)  3 ねずむ(つねる)  11 ぬっ(寝る)  14 あまくらかす(もてあます、食べきれないで残す)  18 あっちゃこし(逆、反対になっている)  20 まちなんか(待ち時間が長い)  29 つーつらつー(すいすいと、淀みなく)  34 ととしか(たどたどしい、不器用だ)  39 いたちょこ(先に行きましょう、行っておきましょう)

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地域語の経済と社会 第168回 大分県中津市はからあげの聖地?

2011年 9月 17日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第168回「大分県中津市はからあげの聖地?」

 「天高く馬肥える秋」「読書の秋」「スポーツの秋」「芸術の秋」……、と様々なキャッチフレーズのある秋ですが、「食欲の秋」も代表的なものの一つでしょう。

 まちおこしの手段として、食べ物を素材にし、マスメディアなどに話題を提供して知名度アップを図る手法は、すっかりおなじみになりました。
 それも特に高級な食べものや食材ではなく、「B級グルメ、B級ご当地グルメ」などとも呼ばれるように、身近で大衆的なところがミソで、庶民的なものであるほうが、より親近感を持たれ、また広がりを持たせやすいのでしょう。

【写真1 中津市のからあげ店の看板】
【写真1 中津市のからあげ店の看板】
(クリックで拡大します)

 最近、知名度が上がっているものの一つに、大分県中津市の「からあげ」があります。鶏肉に各店がそれぞれ工夫した味付けをし、衣をつけて油でカラッと揚げたもので、ご飯のおかずにもおやつにもピッタリで、市を挙げて知名度アップに力を入れています。
 中津市役所のホームページには、市内のからあげ店42軒が紹介されています。

 中津からあげのリーダー店のひとつ「もり山」には、店頭に方言で書かれた大きな看板が掲げられ、その魅力をアピールしています。

中津名物とりのからあげ
にんにくのいいにおいが ぶあっとして
今すぐごはんが食べとなる
今すぐ酒が飲みとなる
にごじゅうの人(し)も
食べたらすぐに 元気がでてくるで
さあ食べちょくれ

 「にごじゅうの人(し)」の、「し」は「おとこし・おなごし(男衆・女衆)、わけーし(若い衆)」のように使われ、〔~の人(たち)〕という意味ですが、「にごじゅう」は掛け算の「二×五=十」から転じた語で、〔当たり前、見たまんま、その通り〕ということから、さらに〔完敗、お手上げ〕などいろいろな意味あいでも使われるようですが、店主によるとこの看板では〔くたびれた人、元気のない人も食べたらすぐに元気が出てくるぞ〕といった意味を込めて使用したということです。
 「食べちょくれ」は「食べておくれ」の変化したもので、大分の方言では「~して」が「~しち」となりますから「~しちおくれ」となり、さらに「~しちょくれ」と変化したもので、〔食べてください〕という意味です。

 「日本唐揚協会」という、からあげをこよなく愛する人たちで作っている組織があり、中津市はその関係者の間では「聖地」とまで呼ばれている由。

【写真2-1 店頭ではためくのぼり】 【写真2-2 店頭ではためくのぼり】
【写真2 店頭ではためくのぼり2種】

 地元でもどの店の味がいいか食べ比べて各人それぞれにひいきの店、好みの味があるそうで、競争が工夫を生みだし、それがまた各店の知恵を引き出し、話題が話題を呼ぶ相乗効果を上げているとのこと。B級ですから財布にもそれほど大きな影響を与えませんし、食べ歩きの楽しみも尽きません。

 なお、大分県内ではその他にも、中津市の南に隣接する宇佐市も、日本で最初のからあげ専門店が生まれたとされ、“我がほうが先輩格”だと、同様にPRに力を入れています。
 その記念碑も建てられ、ゆるキャラの「うさから」君も作られて盛り上げを図っています。

 また、大分市の鶏肉の天ぷら=いわゆる「とり天」はかなり前から知られています。

 総務省の家計調査から算出した鶏肉消費量ランキング(2008年)によると、大分県は1世帯当たりの鶏肉の消費量が、全国第1位を誇っており(九州は、全国7位までに長崎を除く6県がランクイン)、そういう土壌の上に、こういった食べ物が展開され、好まれることにつながっているようです。

 

《参考》
 大分県中津市のホームページ(http://www.city-nakatsu.jp/modules/kankou/index.php?id=342)には、市内のから揚げ店42軒が地図入りで紹介されています。
 日本唐揚協会のホームページは、http://karaage.ne.jp/を参照。

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地域語の経済と社会 第163回 「クールビズは方言ポロシャツで…」~茨城県筑西市の事例~

2011年 8月 13日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第163回「「クールビズは方言ポロシャツで…」~茨城県筑西市の事例~」

 ことしは福島県の第一原発の事故に端を発して全国的に電力不足が心配され、この夏はできるだけ冷房を使わないで済ませるよう、例年にも増して「クールビズで過ごそう」と強く呼びかけられています。

 猛暑の夏は、ネクタイを外すだけでも体感温度は相当違いますし、だいいち首を締めつけないので気分的にも解放感があり、噴き出る汗の量まで違ってきそうです。

 各地で、それぞれの職場の雰囲気にも合うよう、いろいろと工夫を凝らしてこの夏を乗り切ろうとしていますが、今いちばん必要なのは、何よりも私たちの意識の変革でしょう。

 茨城県筑西市役所では、くだけ過ぎず、適度な品位も保てるようにと、ポロシャツでの勤務を奨励。市職員互助会と職員組合から選出されたメンバーがアイデアを出し合い、方言を活かした半袖のオリジナルポロシャツを作りました。

【写真1 筑西市役所の方言ポロシャツ(写真提供:筑西市役所)】
【写真1 筑西市役所の方言ポロシャツ】
(写真提供:筑西市役所)
(下は胸のロゴを拡大したもの)
【写真2 胸のロゴ】

 胸に青い字で「暑かっぺ だって夏だが しゃーねーべ」と、方言がプリントしてあり、袖口には「ひとりの力が大きな力に chikusei絆project」と、共通語でメッセージが書かれています。
 方言の意味は、同市のホームページによると、「この地方の方言を使って、「夏は暑いに決まっている。仕方がない。この夏を、笑顔で・楽しみながら、頑張って乗り切って行こう!」ということを表現しています」と解説されています。

 「暑かっぺ」は、直訳すると推量の意の〔暑いでしょう?〕に当たります。そして、それを承けて〔だって夏だから、仕方がないだろう!〕と、いわば問答体になっており、「夏の暑さはまったくどうにもならないよ、どうにも困ったもんだなぁ」と、嘆息するような、ちょっとユーモラスな気分も感じられる表現になっています。

 市役所を訪れる市民からの評判も、好評だとのこと。
 当初は市の職員用として作られたのだそうですが、とかく硬いイメージをもたれがちな市役所がこういうポロシャツを作ったのはユニークだと、新聞各紙や放送などでも取り上げられ、市民からも購入申し込みが相次ぎ、これまでに1300枚以上が販売され、今も売れ続けているということです。
 その売り上げの一部は、震災復興に…と、義援金として日本赤十字社に寄付されているとのことです。

 市では、このところの大震災と原発問題にゆれる緊急時に、市職員と市民の一体感が増した気がすると話しています。

 

《参考》筑西市のホームページには、「クールビズ・アクション ちくせい」として、市庁舎内のエレベーター1台の使用禁止、ポロシャツの推進、冷房の室温28度の厳守、……などの取り組みが挙げられています。

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地域語の経済と社会 第158回 大分のおみやげ『AGURU』~味の現物カタログ~

2011年 7月 9日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第158回「大分のおみやげ『AGURU』~味の現物カタログ~」

 日本全国には様々な特産品や珍しい産物が、たくさんあります。自分の知らないもの、初めてのものはもちろんですが、知っているものでもお気に入りの品物をもらうのは大変うれしいことです。
 「お世話になったあの方へ…」。お中元の季節が近づいてきました。

 大分は、海あり山あり平野ありと、地形も変化に富み、そこで獲れる魚介類や海産物・農産物も豊富で、古くから大分県(豊前・豊後)は「豊(とよ)の国」と呼ばれてきました。

【写真1 デパートのみやげもの売り場で】
【写真1 デパートのみやげもの売り場で】
(クリックで並んでいる様子を拡大表示)
【写真2 JR大分駅の『AGURU』の紹介案内板】
【写真2 JR大分駅の『AGURU』の紹介案内板】

 そんな豊かな特産物の数々を、多くの人に知ってほしい、利用してほしい、味わってほしいと、大分県の食の特産品を、小分けにして使いやすくパッケージしたのが、『大分のおみやげ AGURU』です。
 大分県庁が音頭をとり、従来からあった品々をグループ化し、まとめてパック。その普及と利用拡大に力を入れています。値段も1300円~3000円と、手頃な設定になっています。

 大分県庁のホームページには「開発に当たっては、専門家(食環境プロデューサー)が県内各地を巡り、調味料や郷土料理など約200の商品の中からエコで大分らしい商品を厳選。『洋食セット』『大分のこだわり』『大分のよりすぐり』『大分のおやつ』と、大分らしさにこだわった4種類の詰め合わせ商品ができあがりました」と紹介されています。

 核家族化が進み、また高齢化も進行して、たくさんの量をいただいても少人数の家族では食べきれず、ご近所や友人・知人にお裾分け…、などという体験も多くの人がしているのではないでしょうか。「小分けされている」というのも、そんな現状を考慮してのこと。
 いわば、少量ずつの“味見用お試し見本セット”“現物による味のカタログ”とでもいったらいいでしょうか…。「お気に召したらぜひ本格的にご注文を…」と、注文ガイドのしおりも入っています。

 その名「AGURU」をローマ字表記で見ると、はて、何語で、どういう意味だろうかと思いたくなりますが、実はこれ、〔(あなたに)上げる、差し上げる〕という意味です。
 大分県をはじめ、九州各地には、古い「動詞の二段活用」が今もまだ現役で活躍中で、日常の会話でもよく使われています。

 「AGERU」(上げる)でもよさそうですが、それでは当たり前すぎる。そこをちょっと古風に「AGURU」(上ぐる)と命名し、伝統ある品々だという雰囲気を醸し出す効果ももたせています。また、方言をローマ字で表記するのは、これまでにこの連載で取り上げた事例でおなじみのように、近年、しばしば見られる手法です。

 贈り主からの、「この中には、長い伝統のもとに作られ、愛されてきた品々が入っています。どうぞ味わって、楽しんでください」という思いも添えて、大分から全国各地に届けられます。(なお、地元・大分の他、東京でも入手可能だということです)

 

《参考》http://www.mejiron.tv/channel/4/video_detail.php?vc=130128937246では、大分県庁からのテレビ広報番組で取り上げられた『AGURU』の紹介を見ることができます。
 動詞「上げる・上ぐる」の地元でのアクセントは「低高高」の平板型ですが、この番組では『AGURU』は、名詞ととらえてでしょう、「高低低」の頭高型で発音しています。
 また、大分県庁のホームページhttp://www.pref.oita.jp/site/sinzidai/toku276.htmlhttp://www.pref.oita.jp/soshiki/14300/ooitamiyage.htmlでも紹介されています。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第153回 他地域の方言を活用した交通看板~宮崎県清武町の事例~

2011年 6月 4日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第153回「他地域の方言を活用した交通看板~宮崎県清武町の事例~」

 「交通安全」は皆が願いながら、なかなか守られにくいもののようで、痛ましい交通事故や、取り返しのつかない死亡事故はいっこうに後を絶ちません。

 この連載の第8回で、大分県大田村の交通安全を呼びかける方言看板の例を、また第43回では北九州市の「自転車を降りチャリ、押しチャリ」を、第78回では宮崎県警の「てげてげ運転追放運動」、などを紹介しましたが、宮崎県の清武町で、地元の方言ではない、他の地域の方言を活用した事例に出会いました。

(クリックで周辺の様子も拡大表示します)
【写真1 肥筑方言を使って…】 【写真2 関西方言+土佐方言で…】
左:【写真1 肥筑方言を使って…】
右:【写真2 関西方言+土佐方言で…】

 ひとつは、「止まれ 自転車も左右の確認せんといかんばい!」とあり、九州西部の肥筑方言で有名な文末詞の「ばい・たい」の「ばい」が使われています。

 もうひとつには、「青信号 クルマに自転車も/スピード突入 あかんぜよ」とあります。
 「あかん」からはすぐに関西方言が、また「~ぜよ」は去年のNHKの大河ドラマ『龍馬伝』で話題になった土佐方言が頭に浮かんできます。

 この文案を考えた作成者に聞いたところ、「交通事故がなくなることを強く願っています。ふつうに共通語で「自転車も左右の確認をしましょう!」とか、「青信号でもスピード突入はいけません」と言ったのでは、当たり前すぎて少しも印象に残らない。そこで同じ九州の方言で、地元の人にも意味がよくわかる「ばい」を使い、またテレビ・ラジオで知られた他の地域の「あかんぜよ」を活用して、少しでも運転者の注意を引き、インパクトがあるものにしようと考えました。実は、私自身、小学校入学前の長女を交通事故で亡くすという、非常につらい体験をしているものですから……」とのことでした。

 もし素直に地元の方言で表現するとしたら、「左右を確認せんといかんど!」「突入したらだめど!」などとなるところでしょう。
 それとはちょっとずらして、しかし言わんとする意味あいはしっかり伝わるように……、というねらいのもとに、他の地域の有名な方言を活用して表現した、この「方言看板」。

 じゃっとよ。まこつ、交通事故防止ん、効果を発揮してほしいっちゃが!(これは地元の方言です)。〔そうなんだよ。本当に、交通事故防止に、効果を発揮してほしいんだよ!〕

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地域語の経済と社会 第148回 ACジャパンの新聞用広告~関西弁の迫真力~

2011年 4月 30日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第148回 「ACジャパンの新聞用広告~関西弁の迫真力~」

 テレビを見ていると、ときどきコマーシャルタイムに、社会人として必要なマナーや、この頃おろそかにされがちな公徳心を喚起する短いメッセージなどが流れて、最後に「♪エーシー」と結ぶのを見ることがあります。

 東日本大震災直後の、民放の報道番組では、通常のCMは一斉にこの「♪エーシー」に代わり、繰り返し流れてきました。

 実は、その新聞版もあるのをご存じでしょうか? 京都で手にした新聞に、次のような広告がありました。平成23年4月1日(金)『毎日新聞』夕刊(大阪本社発行)から、ちょっと長いですが、引用します。

「ちょっとACさん、おせっかいはやめてくれへん」

「なぁなぁ、ときどきACのCMって、テレビで見るやん。
 あれってどう思う?」

「エ-シ-♪言うやつやろ。あれなぁ、
 あれってちょっとおせっかいちゃうの」

「なんかええこと言うてんのかも分かれへんけど
 なんであんたに説教されなアカンのって感じやねんなぁ」

「ACってお役所?」

「役所とはちゃうみたいやけどな」

「昨日なんか、部長からやいやいお説教された後、
 やっと家でテレビ見てはぁーってしてるときに
 正しいこと言うねんもん。なんか、むかつくわぁ」

「ときどき上から目線なんよねぇ・・
 ええこと言うてるときもあるねんけどなぁ」

「そやなぁ、けどACのCMがなかったらどないやろ?
 ちょっと寂しいかなぁ」

「ちょっとな・・」

ACジャパンは公共広告を発信する民間の団体です。
おせっかいかもしれませんが、
これからもよろしく、です。

 「ACジャパン」(旧・公共広告機構)の事務局によると、我々がテレビでお馴染みのものは「公共広告」と言い、上記は「ACジャパン」という団体そのものを知ってもらうためのもので、「広報広告」というのだそうです。(なお、これと同じ内容の、ラジオ用の音声での作品もあるとのことです)

【写真 AC自体を取り上げた新聞広告】
【写真 AC自体を取り上げた新聞広告】
(クリックで全体を拡大表示します)

 たまたま関西で手にしたので、関西地域用なのかと思いましたが、そうではなくて、これは今年度の「全国キャンペーン」の作品で、全国の新聞でも見かけることができるものだということです。

 関西弁でのストレートな会話が展開されており、あたかもいま関西の家庭のテレビの前で交わされていそうな、いかにもありそうな会話です。AC自体を俎上に載せて、「おせっかい、お説教、お役所? むかつく、上から目線、…」等々、歯に衣着せぬ、辛辣なホンネトークが、リアリティーいっぱいに繰り広げられています。

 が、最後は「けど、なかったら、ちょっと寂しいかなぁ/ちょっとな・・」と、その存在価値もしっかりアピールして、「おせっかいかもしれませんが、これからもよろしく、です」と結ばれています。
 関西弁のホンネトークの本領発揮、なかなかひねりの効いた広報ではないでしょうか。

《参考》「ACジャパン」のホームページ(http://www.ad-c.or.jp/)には、これまでのテレビ用と、新聞・ラジオ用の作品も収録されています。今年度のテレビ放送分は動画で、これまでの分は代表的なシーンが静止画で示されています。
 また全国版の他に、各地域版というのもあり、その中には方言が活用された作品もあります。

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地域語の経済と社会 第143回 鹿児島市の「キャンセビル」と「よかセンター」

2011年 3月 26日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

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第143回 「鹿児島市の「キャンセビル」と「よかセンター」」

 鹿児島に行ってきました。つい先日3月12日に九州新幹線が全線開業し、新大阪駅から終点の鹿児島中央駅まで最速3時間45分で行けるほど時間距離が縮まりました。が、おりしも東日本を襲った巨大地震の直後だけに、予定されていた祝賀行事などはなく、静かなスタートになったということです。

【写真1 キャンセビル入り口のプレート】
【写真1 キャンセビル入り口のプレート】

 その鹿児島中央駅東口のすぐ前に、スーパー「ダイエー」などが入っているビルがあり、その名を「キャンセビル」という由。一瞬「一体これは何語だろうか?」と思いましたが、実はこれ、鹿児島の方言にちなんだ名前だとのこと。

 鹿児島では「キバイヤンセ」〔気張りなさい、元気で頑張りなさい〕のように、「~シヤンセ」は、相手にやさしく〔~しなさい〕と勧めるときに使う敬語表現です。「キャンセ」は「来ヤンセ」をもじったもので、〔どうぞおいでください、いらっしゃい〕と呼びかけています。このビルは、駅前再開発によって、平成11年6月に完成。名前は1200点もの応募作の中から選ばれたのだそうです。

 またこのビルの7・8階には「よかセンター」があります。正式な名称は、鹿児島市長を理事長とする「財団法人 鹿児島市中小企業勤労者福祉サービスセンター」が運営する「鹿児島市勤労者交流センター」といい、「よかセンター」はその愛称(鹿児島方言でいうとシコナ(醜名)=ニックネーム)です。

【写真2 「よかセンター」の案内掲示】
【写真2 「よかセンター」の案内掲示】
(クリックで画像の全体を表示します)

 ここには、体育館やトレーニングルームなどの運動施設、多目的ホールや会議室・和室・創作室などの文化施設があり、くつろいだ雰囲気の中で雑誌や新聞を読めるサロン、囲碁・将棋を楽しめる娯楽室なども備えています。駅のすぐ前という非常に便利なところにあり、使用料も安く、市民に盛んに利用されています。

 「よか」は言うまでもなく、九州方言を代表する、「高か、安か、速か、楽しか、…」のように語尾が「~か」で終わる、いわゆる「カ語尾」の形容詞で、〔良い〕という意味ですが、もちろん「余暇」を有効に活用して充実した毎日を過ごそうという意味も含まれています。鹿児島市役所のホームページにも、この施設は「勤労者の余暇活用の充実と相互の交流を促進するために設置したもので……」とあります。

 以前、この連載の第13回で「方言名の公共施設」を取り上げ、青森駅前のビル「アウガ」〔会おうよ〕と、その中に入っている青森市の男女共同参画プラザ「カダール」〔仲間になる、語る〕を紹介しましたが、この鹿児島市の例も、期せずしてまったく同様の発想で命名されており、日本の北と南で同じようなネーミングが行われているその偶然の一致が、非常におもしろく思われます。

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地域語の経済と社会 第138回 徳島県上勝町の会社の広報紙『しわしわゆこう』

2011年 2月 19日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

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第138回 「徳島県上勝町の会社の広報紙『しわしわゆこう』」

 「しわしわゆこう」とは、方言なのですが、さて、一体どういう意味でしょうか?

 実は、『しわしわゆこう』というのは、徳島県のユニークな町おこしの会社が出している広報紙の名前です。徳島県勝浦郡上勝町(かみかつちょう)は、日本料理の彩りや飾りに使う木の葉などをお年寄りが集めて出荷し、活き活きとした町づくりをしていることで知られています。「葉っぱビジネス」と呼ばれ、昭和62(1987)年にスタートしました。

【写真 『しわしわゆこう』紙(vol.3)】【写真 同紙の紙面(vol.4)】
【写真 左: 『しわしわゆこう』紙(vol.3) 右: 同紙の紙面(vol.4)】
(クリックで拡大表示します)

 そういう仕事の運営をしている会社「いろどり」が、お年寄りに呼びかけて、この仕事が始まりました。同社のホームページには、次のように説明されています(抜粋)。

 徳島県上勝町は、徳島市中心部から車で約一時間程の場所に位置しており、人口は1,997名 854世帯(平成21年9月1日現在)、高齢者比率が49.5%という、過疎化と高齢化が進む町です。しかし一方で、全国でも有数の地域活性型農商工連携のモデルとなっている町でもあります。昭和56年2月に起きた寒波による主要産業の枯渇という未曾有の危機を乗り越え、葉っぱ(つまもの)を中心にした新しい地域資源を軸に地域ビジネスを展開し、20年近くにわたり農商工連携への取り組みを町ぐるみで行っています。(中略)
 「葉っぱビジネス」とは“つまもの”、つまり日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを、販売する農業ビジネスのことです。 株式会社いろどり代表取締役である横石が「彩(いろどり)」と名づけてスタートしました。
 葉っぱビジネスのポイントは、軽量で綺麗であり、女性や高齢者でも取り組める商材であること。現在の年商は2億6000万円。中には、年収1000万円を稼ぐおばあちゃんもいます。(以下、略)

 『しわしわゆこう』には、紙名の由来が、次のように書かれています。

 しわしわとは『ゆっくり』という意味を持つ阿波弁。『ゆっくりとあせらずに行こうよ』というメッセージを込めたタイトルです。ちなみに『ゆこう』は『ゆこう(柚香)』という徳島県内の総生産量の半分以上を上勝町が占めている香酸柑橘です。

 「しわしわ……」という表現からは年輪を刻んだお年寄りたちを連想させます。「ゆこう」は、「(ゆっくりと、あせらずマイペースで)行こう」という意味あいをも感じさせる、なかなかおもしろい、個性的なネーミングです。

 季刊、B4版2ページのコンパクトな紙面に、ひと・もの(特産品、料理、観光情報、……)・うごき(行事、書籍紹介、……)などがカラーで掲載されています。人物インタビューでは方言での直接話法を活かしたり、見出しに方言使ったりして、親しみのもてる工夫がなされています。

 また、上勝町に関するブログを集めたインターネット上のページも「やるでないで上勝」 (http://www.tm-i.net/kamikatsu/index.htm)と言い、これも〔(なかなか)やるではないか〕という意味の方言です。

 なお、この葉っぱビジネスに関する人間ドラマが映画化されて(仮題「そうだ、葉っぱを売ろう!」)、来年公開予定だということです。

 《参考》株式会社「いろどり」のホームページはhttp://www.irodori.co.jp/own/index.aspを参照。また、『読売新聞』(平成22年12月19日付)の「ひと物語 道を極める」欄で、上勝町の葉っぱビジネスの記事が、写真入りで紹介されました。

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