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地域語の経済と社会 第111回 方言メッセージで大観光キャンペーン

2010年 8月 7日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第111回「方言メッセージで大観光キャンペーン」

 日本の国宝第1号は岩手県にあります。平泉の中尊寺金色堂です。奥州藤原氏四代(清衡,基衡,秀衡,泰衡)の墓所・廟所でもあり,深い仏教的思想のもとに建立された文化財です。松尾芭蕉の『奥の細道』に「五月雨の降り残してや光堂」と詠まれるなど,古くから広く知られています。

【写真1 キャンペーンのポスター】
【写真1 キャンペーンのポスター】
(クリックで全3種を拡大表示)
【写真2 昨年のわんこきょうだいと「おでんせ」】
【写真2 昨年のわんこきょうだいと「おでんせ」】
【写真3 方言メッセージの部分】
【写真3 方言メッセージの部分】
(クリックで全3種を拡大表示)

 岩手県では,この金色堂を含む寺院群の「世界文化遺産」への登録を目指しています。この夏も,昨年と同期間7月1日から9月30日まで「いわて・平泉 観光キャンペーン」を大規模に展開しています。

 広告方法は,ネットでの案内http://www.iwatetabi.jp/cp/index.php,パンフレットやグッズの配布のほか,ポスター【写真1】3種類の掲示などです。

 わんこそばのキャラクター,5(人)の「わんこきょうだい」【写真2(2009年版)】が,このキャンペーンで活躍しています。http://www.iwatetabi.jp/wanko/

 今年は,ポスターに長い文章の方言メッセージを入れました【写真3】。共通語訳なしでもある程度意味が伝わるように,共通語の表現や漢字を入れるなどの工夫もあります。

 ポスターの方言メッセージを紹介します。ここで『タイトル』のみ共通語訳を付けます。“ / ”はポスターでの改行箇所です。

(緑)じゃじゃ どでんした (あらあら おどろいた)
むがすむがす平泉にはな / 黄金文化が栄えでいだんだど。 / ほがにもいわでにはな, / 縄文の遺跡だの,神楽だの,昔話だの, / 歴史の浪漫や伝統文化があふれでんのす。 / むがすのものを大事にしてきたがらな。 / いわでも,ながながたいしたもんだよ。

(赤)まんず おあげんせ(まあまあ めしあがってください)
いわではな,まんず / うんめぇのぁいっぺあっから / とびぎり新鮮な海の幸だべ,
お日さんの恵みをまんまんど受げだ / 山の幸や里の幸も絶品だ。 / おらほ自慢のいわでの味を, / 腹いっぺぇ,おあげんせ。

(青)『たいした いいながめだ』(とても,いいながめだ)
いわてはな,どこさいっても / ためいぎでるよな眺めさ会えっから / 海だの,山だの,高原だの, / なんもかんも,きれいだがら / いわでさ来たら,うんめぇ空気吸って / のーんびりしでげばいいんだ / まんず,いわでさあべ。

 まんず,いわでさおでってくたせんせ。

 みやごでゃーば,なずも,すずすごぜぁんすー。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

* * *

【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

* * *

この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第106回

2010年 7月 3日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第106回「『方言』と『しゃれ』のコラボ」

 北国の北海道は涼しいはずですが,先月6月のおしまい,北海道の暑さはすさまじいものでした。特に26日には30年ぶりの記録更新となる足寄の37.1℃をはじめ,帯広,北見など15地点で最高気温35℃以上の「猛暑日」を記録しました。

 これで思い出したのが,今から十数年前の夏のことです。1997年7月末,北日本は連日の猛暑に襲われました。そのときの『北海道新聞』の大見出しが「あついっ暑」でした。北海道方言の代表のような,確認の「―ッショ」と「暑」が掛けられているのは,北海道の人ならすぐに分かりますね。

 今回は,このように,『方言』と『しゃれ』を併せて使用した方言の有効活用例を取り上げます。

【写真1】じっ茶ばっ茶
【写真1】じっ茶ばっ茶
(クリックで全体を表示)

 岩手県の方言で,おじいさんを「ジッチャ」,おばあさんを「バッチャ」と呼ぶ地域があります。北部で優勢のようです。

 これを,ペットボトルのお茶の名にした商品が,岩手県岩泉町の株式会社岩泉産業開発から発売されています。その名も「じっ茶ばっ茶」【写真1】です。内容は,岩手県産の豆や雑穀を焙煎した烏龍茶です。

【写真2】いずこ…えずこ
【写真2】いずこ…えずこ

 もう一つ,第13回で紹介されている,宮城県の「えずこホール」の関連です。これ自体は施設名の方言ネーミングで,第13回で紹介された例の他にも多数あり,最近では特に珍しくはないものです。

 このホールの『方言』と『しゃれ』は,ホールの紙のパンフレットにある「いずこの人も えずこに来たれ。」のメッセージ【写真2】です。このホールを活動の場にしている多くの住民創造グループへの参加募集のメッセージで,第13回でもリンクしているインターネットの案内には認められないものです。

 また,第43回の「自転車を『降りチャリ、押しチャリ』」も,『方言』と『しゃれ』による,方言看板・ポスター類ですね。

 沖縄県那覇市に「ニーフェーデービル」(那覇の方言で「ありがとう」の意)という名のビル(建物)があるという情報も戴いています。これについては現在確認中です。

 皆さん,言語の商業的利用には,こういう「楽しみ」もあります。

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言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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地域語の経済と社会 第101回

2010年 5月 29日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第101回「『市』を挙げての方言メッセージ~『おおきに』と『おでんせ』」

 この連載も,今回から新たな100回となります。

 この記念すべき回の題材として,私が住んでいる,岩手県宮古市の『市』を挙げての方言メッセージ,「おおきに」と「おでんせ」を取り上げます。

【写真1】宮古市役所の巨大メッセージ
【写真1】宮古市役所の巨大メッセージ
(クリックで拡大)

 使用例の紹介の前に,今回の二つのことばについて説明します。「おおきに」は,「ありがとう」の意味です。「おおきに」というと関西(だけ)のことばかと思われがちですが,東北地方でもよく使うことばです。「おでんせ」は,この連載で何回か(第36回第61回)取り上げている「いらっしゃい」の意味です。

 まず,宮古市役所(前庭)の例を紹介します。「おおきにと おでんせの心が 生む交流」と,高さ5メートルほどの『塔』に,大きく書かれています【写真1】。“『市』を挙げて”と表現した意味がご理解いただけるかと思います。なお,塔の先端の絵は,宮古市のシンボル「鮭」の顔を図案化したものです。

【写真2】ホテル内の売店(左)と料理茶屋(右)
【写真2】ホテル内の売店(左)と料理茶屋(右)

 次に,陸中海岸国立公園内の浄土ヶ浜パークホテルの,売店「おおきに」と料理茶屋「おでんせ」【写真2】です。方言ネーミングであり,方言メッセージでもあります。このホテルは,1997年10月の,天皇皇后両陛下の宮古市行幸啓の際の行在所(あんざいしょ)となりました。

みやげ物店(上:表側/下:店内側)【写真3】
【写真3】みやげ物店(上:表側/下:店内側)

 また,JR宮古駅に隣接するみやげ物店では,出入り口の両面に示されています。表側,つまりお客が入るとき目に入るように「おでんせ」が,また,店内側,つまりお客が出るとき目に入るように「おおきに」のメッセージが,それぞれ示されています【写真3】。なお,このみやげ物店の店員さんは,『新明解国語辞典』をカウンターに置いて,よく使っているということでした。

 このように,市役所,観光地としての代表的ホテル,そして,お客様方がまずは降り立つ駅前に,「おおきに」と「おでんせ」が使われているわけです。どうぞ,一度,宮古さおでんしてくたせんせ。おーきに,どーもどーも,ありがとごぜんす。

 皆さん,この先100回も,また,その先も末永く,どうぞ,ご愛読のほど,よろしくお願いします。

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言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第96回

2010年 4月 24日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第96回「ワンポイント方言メッセージ」

 これまで紹介のとおり,「方言メッセージ」の多くが,目立つように大きく示されます。

【写真1】やきそばスナック「う宮」
【写真1】やきそばスナック「う宮」
(クリックで全体を表示)
【写真2】なっとう味スナック「うまかっぺ」
【写真2】なっとう味スナック
「うまかっぺ」
(クリックで「うめ味」の範囲を
拡大して表示)

 しかし,注意して見ていないと見逃してしまう,『ワンポイント方言メッセージ』とでも呼べるような例もあります。今回これを2例紹介します。

 1例目は,第84回でも触れた,静岡県の「富士宮やきそば」です。最近,マスコミでもよく取り上げられます。富士宮の現地で焼きたてを食べるのが基本ですが,カップ麺(東洋水産株式会社http://www.maruchan.co.jp/products/search/1097.html)やスナック(株式会社おやつカンパニーhttp://www.082.oyatsu.co.jp/lineup/omiyage/tokai.html)が,静岡県内の観光みやげ店などで販売されています。

 「う宮・ウミャー」のメッセージが多くの製品に付けられています。例えば,スナックの箱【写真1】です(カップ麺は第84回で紹介)。静岡県地方の方言で「美味しい」の意の「ウミャー」で,そこに「富士宮」の「宮」を掛けているのも面白い工夫です。企画は,富士宮焼きそば学会http://www.umya-yakisoba.com/で,URLにも「umya」が入っています。

 2例目は,茨城県の「なっとう味スナック」(石岡市の株式会社メーコウhttp://www.710379.com/)です。茨城の象徴,水戸黄門と助さん格さんの絵に,茨城の方言のメッセージ「うまかっぺ」が付いています【写真2】。「-ぺ」は確認の意で,メッセージの意味は「美味しいでしょ/美味しいよね」です。「うめ味」と「からしマヨネーズ味」があり,各々で3人の表情や衣装またポーズが異なります。

 …ただし,水戸徳川藩主は「江戸定府」(意味や読み方は日本史の勉強のためにもご自分で調べてみましょう)のため,水戸黄門自身が(助さんと格さんも各々別の理由で)水戸の方言を使えたかは?ですが…

 皆さんも,方言メッセージについて気にしていると,こういう,小さなものも自然と目に入ってくると思います。

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【写真3】「おめはん 一人じゃながんすべ」パンフレット【写真4「おめはん 一人じゃながんすべ」カード】
左:【写真3】「おめはん 一人じゃながんすべ」
パンフレット(クリックで全体を表示)
右:【写真4】「おめはん 一人じゃながんすべ」カード

《補遺》

 第86回で,道徳啓発の「方言看板・ポスター類」を考え,不正軽油禁止を呼びかけるガソリンスタンドのレシートの裏面の例と,自殺防止のポスターを紹介しました。

 その後,自殺防止のポスターと同じデザインで,パンフレット【写真3】とカード【写真4】も作られて配布されています。

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 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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地域語の経済と社会 第91回

2010年 3月 20日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第91回「駅弁シリーズ(2) ―奈良時代の日本語も生きる―」

 駅弁は,その土地の地方色を出すことが求められます。名物料理や特産物を入れたり,土地にふさわしい名称を付けたりします。方言が使われるのが自然な成り行きだと思いますが,意外と少ないようです。

【写真1】までぇにつぐったお弁当
【写真1】までぇにつぐったお弁当
(クリックで全体を表示)

 この連載の第62回では,福島県の郡山駅の「方言駅弁『ずうずう弁』」が紹介されました。今回は,その駅弁シリーズ(2)とします。2件紹介します。

 一つは,「までぇにつぐったお弁当」【写真1】です。宮城県のJR仙台駅内で発売されています。

 「までぇに」は,パッケージの共通語訳のとおり,「ていねいに」の意味です。(あとで解説)

 「つぐった」は,東北方言の特徴である語中カ行音の濁音化現象を写していますね。

 これらの解説や,「宮城のうめぇもん ぎっしり」の方言も記されています。⇒【写真1~全体】

 さて,「まで」は,今から1400年以上前の奈良時代から続くことばです。元の意味は「両手」です。

 はっきりと「両手」の意味の用例が確認できるのは,鎌倉時代で,「まて」でした。奈良時代にもその用法があったことも推定されています。

 『万葉集』(759年頃成立)は,漢字だけで日本語を表す万葉仮名で表記されていますが,その表記方式の一つに戯訓と呼ばれる当て字的表記があります。そのなかで,助詞の「-まで」の多様な表記のうち,両手を示す表記(「二手」「左右」「左右手」「諸手」)もあります。これが,奈良時代に既に両手の意の「まで」があった証明とされています。

 正宗敦夫編『万葉集総索引』で数えたところ,助詞の「-まで」は全部で167例,うち,両手を示す表記でのものは54例でした。

 「まで(まて)」の「ていねい」の意味は容易に理解できます。両手で物を扱うのは,片手でよりていねいになりますね。そこからこの意味が,安土桃山時代から出てきました。これが,現代では東北地方の方言で使われます。「まて」も「まで」も,東北方言では「ま[で]」です。

【写真2】駅行く弁(駅行くベー)
【写真2】駅行く弁(駅行くベー)

 なお,お弁当は中華弁当で,宮城県大崎市の福祉施設で作った餃子や焼売を使い,施設と仙台市の業者の共同企画で製作されています。

 もう一つ,お弁当そのものではなく,企画旅行商品です。

 JR東日本の駅弁付きツアー「駅行く弁」です。「弁」のところが,勧誘の「べー」と掛けられ,「駅行くべー」(駅に行こう)となっています。

 “東北新幹線”が駅弁を食べる図柄がシンボルマーク【写真2】です。

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 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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地域語の経済と社会 第86回

2010年 2月 13日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

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第86回「方言看板・ポスター『類』」

 この連載で紹介している,方言の拡張活用の種類について,第31回で整理しました。その⑥を,道徳啓発のための非営利的な方言の利用の「方言看板・ポスター」としました。この種のものはほとんどが,看板やポスターを伝達媒体としているからです。

 この連載でも,これまで5回,紹介しています。第8回(交通安全:大分)第24回(自転車・バイクの通行/歩きたばこ禁止:京都)第43回(自転車の通行:福岡)第63回(飲酒運転防止:宮崎)第78回(安全運転:宮崎)です。

【写真1】レシートの裏のメッセージ
【写真1】レシートの裏のメッセージ
(クリックで全体を表示)

 そういうなか,看板やポスター以外による道徳啓発の方言活用の例がありました。今回は,まず,これを紹介します。

 岩手県で不正軽油防止を呼びかける「絶対わがね! 不正軽油」です【写真1】。ガソリンスタンドの「レシートの裏面」を利用しています。レシートは,幅5.6cmの,スーパーなどでも使っているごく普通のものです。小さいですが,そのメッセージが一人一人に行き渡りますね。

 メッセージのうち,「わがね」のところが,岩手県盛岡市あたりの方言です。意味は「ダメ」です。

 元は,「わからない」です。東北地方の方言で,「ダメ」の意味でよく使われる表現です。

 それがこの方言の音韻の特徴(詳細はここでは省きます)により,[ワガンネァー]から[ワガネ]と変化したものです。

【写真2】自殺防止キャンペーンのポスター
【写真2】一人じゃありませんよ。
(クリックで全体を表示)

 今回,レシートを伝達媒体とする方式が確認されましたので,「看板・ポスター」に『類』を加え,この種のものを,「方言看板・ポスター類」と呼ぶことをあらためて提案します。

 岩手の「方言看板・ポスター類」には,最近(2009年12月)出たものがあります。道徳啓発としては少々重いテーマですが,自殺防止キャンペーンのポスターです【写真2】。

 メッセージは「おめはん 一人じゃながんすべ」で,岩手県盛岡市あたりの方言です。意味は「あなたさん,一人じゃありませんよね(あるいは)一人じゃないんでしょ」です。

 「おめはん」は「お前さま」の転で,岩手の方言では,丁寧語また尊敬語の第二人称代名詞です。「ながんす」は「ない」の丁寧表現です。「がんす」は岩手の丁寧表現法として,第21回第66回第61回の〔補遺〕),第81回で紹介しています。「べ」は「べー」で,ここでは確認の用法です。この方言の音韻の特徴により短音化しています。

 自殺防止での方言利用は,方言で語りかけることが,人の心を解きほぐす効果が特に大きいからですね。

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『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
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地域語の経済と社会 第81回

2010年 1月 9日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第81回「ケセン語メッセージ」

 あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

 さて,岩手県の太平洋沿岸地帯の南端部は,以前,「気仙(けせん)郡」でした。現在の行政区域では,釜石市唐丹(とうに)町・気仙郡住田町・大船渡市・陸前高田市です。場所を地図で確認してください。

よくいらっしゃったねぇ
【写真1】よくいらっしゃったねぇ
またいらっしゃいよ
【写真2】またいらっしゃいよ

 今回は「ケセン語メッセージ」を紹介します。

 「ケセン語」とは,大船渡市の医師で方言研究家の山浦玄嗣(やまうらはるつぐ)さんによる,この地域の方言の呼び方です。日本語の中の「気仙方言」ではなく,別言語というわけです。この文章も,山浦先生の呼び方に合わせます。

恋し浜
【写真3】恋し浜
(クリックで全体を表示)
遠野の「~がんせ」
【写真4】遠野の「~がんせ」

 ケセン語メッセージは,三陸鉄道に2例あります。「三陸さぁ よぐきゃんしたねぇ!」(三陸に,よくいらっしゃったねぇ)【写真1】と「三陸さぁ まだきしゃっせんよ!」(三陸に,またいらっしゃいよ)【写真2】です。

 「三陸」と言っても広いのですが,ここでは「気仙地域」を指しています。三陸鉄道には,ケセン語の地域を走る「南リアス線」のほか「北リアス線」がありますが,この両メッセージは,北リアス線の地域では聞かれない,ケセン語の表現です。南リアス線の一部の車両に掲示され,両方とも大船渡市の国立公園内の有名な景勝地の写真が使われています。

 また,大船渡市の「恋し浜」(こいしはま)駅にもあります。「寄ってがっせんやぁ~ 恋し浜駅」(寄ってらしてくださいな 恋し浜駅)【写真3】です。

 「がっせん」は「ございませ」(「ございます」の命令表現)に由来します。同じ由来から,日本語(?)岩手県盛岡方言や遠野方言では「がんせ」【写真4】,岩手県宮古方言では「がん/がーん」となります。

 「がんせ」の終止形が「がんす」で,第21回の「がんすけどん」のもとです。

駅誕生のとき詠まれた短歌
【写真5】
(クリックで拡大)

 なお,「恋し浜」駅は,以前は「小石浜」駅でしたが,駅名(表記)を昨年2009年7月20日に改めました。新しい表記は,駅誕生のとき(1985年),それを祝って地元住民が詠んだ短歌「三鉄の 愛(藍)の磯辺の 小石(恋し)浜 かもめとまりて 汐風あまし」【写真5】にちなんだものだそうです。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

* * *

【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

* * *

この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第76回

2009年 11月 28日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第76回「出雲弁」

「だんだん」=ありがとう(松江市)
【写真1】「だんだん」=ありがとう(松江市)
思い出に「だんだん」(奥出雲町)
【写真2】思い出に「だんだん」(奥出雲町)
(クリックで他の例も表示)
「レンタカーあーよ」(松江市)
【写真3】「レンタカーあーよ」(松江市)
「八百万の神にも出雲弁で」(出雲市)
【写真4】「八百万の神にも出雲弁で」(出雲市)
「方言菓子『だんだん』」
【写真5】「方言菓子『だんだん』」
(クリックで他の例も表示)
「松江市営『出雲弁バス』」(松江市)
【写真6】「松江市営『出雲弁バス』」(松江市)
(クリックで他の面も表示)

 今年は,松本清張生誕100年です。清張の長編小説『砂の器』は,現在の島根県奥出雲町の方言が被害者の手がかりとして使われました。(ただし,注意すべき部分もあります)

 島根県の出雲弁における言語の商業的利用についてご紹介しましょう。

[1]「だんだん」。
NHKの朝の連続テレビ小説の題名にもなりました。「ありがとう」の意です。第71回の「おしょうしな」も「ありがとう」でした。この意味の方言は,商業的利用がしやすいようです。たくさんありました。メッセージ【写真1】はもちろんのこと,方言ネーミング【写真2】にも多く使われています。

※「奥出雲古民家暖々」では,案内の方から「ヨージンシテ」(お気を付けてどうぞ)と出雲弁で送られました。直接話していただいて「だんだん」という気持ちです。

[2]方言メッセージ(「だんだん」以外のもの)。
松江駅前のレンタカー営業所の「レンタカーあ~よ 借りに来ないやぁ」【写真3】と,出雲大社の「知っちょなはーますか?」(知っていらっしゃいますか?)【写真4】です。文によるものなので,この方言の感じが伝わりますね。

[3]方言菓子。
各地にある,方言の印字された菓子です。クッキーとまんじゅうです【写真5】。クッキーには8種の方言が印字され,共通語訳も付いています。

 えなげな(へんな),おんぼらと(ほのぼのと),たばこする(休けいする),だんだん(ありがとう),ちょんぼし(少し),ばんじまして(夕方になりました),ほんそご(かわいい子),まめなかね(元気ですか)

[4]松江市営“出雲弁”バス。
「だんだん」のほか,車体の左右と後方に,方言がたくさん書かれてあります。圧巻です【写真6】。

 

《謝辞》今回の【写真4】は,樋渡登先生(都留文科大学教授)よりご提供いただきました。ここに記しまして感謝の意を表します。

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コアラのマーチ
【写真7】(クリックで拡大)

〔補遺〕

 第66回「世界最小の方言グッズ」の関連する例を補足します。

 ロッテ「コアラのマーチ」です。

「おおきに」と書かれて【写真7】,箱の差込(外からは見えない)に解説が付けられてあります。

 ちなみに,どの箱にも入っているのでなく,なかなか出逢えません。(私の場合,5箱目に2箇入っていました。差込とも関連はしていないようです)

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『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第71回

2009年 10月 24日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第71回「『天地人』は米沢に」

おしょうしな-1
【写真1】おしょうしな-1
(クリックで他のも表示)
おしょうしな-2
【写真2】おしょうしな-2
(クリックで他のも表示)
「そんぴん」焼酎
【写真3】「そんぴん」焼酎
(クリックでラーメンも表示)

 今年のNHK大河ドラマ『天地人』の主人公・直江兼続が仕えた上杉家は,2度の領地替えで,現在の山形県米沢に移りました。直江の有名な「愛」の兜の甲冑も米沢市の上杉神社内に保存されています。

 今回は,その米沢での方言の商業的利用の,代表的なものを少し紹介します。

[1]「おしょうしな」。「ありがとうございます」の意で,商店の方言メッセージなど,米沢の街の中に多く使われています【写真1】【写真2】。

 語源は「お・笑止・な」です。相手に素晴らしいことをしていただき,「恐縮で笑いなど出ない」という意識からでしょう。「お」は丁寧の接頭辞,「な」は終助詞です。

 「笑止」は,一つの語源からいろいろな意味になった例です。新潟や東北では「恥ずかしい」の意で使用され,「ショーシー」「ショシー」「オショシー」「ソースー」その他の語形があります。米沢でもこの意味で「ショーシー」と言います。

 江戸時代の京都方言で「ショーシ」は,「気の毒な」「かわいそう」の意味でした。

上:伝國の「あがやえ」/下:「べこや」新ロゴ
【写真4】上:伝國の「あがやえ」/
下:「べこや」新ロゴ
(クリックで「べこや」旧ロゴも表示)

[2]「そんぴん」。語源は「損貧」で,損をしても貧しくなっても自分の意志を変えない「頑固」の意です。上杉武士の気質を表す語です。焼酎やラーメンに使われています【写真3】。ラーメンでは,米沢は内陸部で海から遠いのに,海産物をトッピングし,「頑固」転じて『へそ曲がり』ということです。

[3]『米沢牛』(高級ブランド牛として有名)のお店2軒【写真4】。

[3-1]「あがやえ」。上杉神社前の焼肉店「伝國」のメッセージで,「召し上がれ」の意です。店名は,第9代藩主上杉鷹山の『伝國の辞』(3ヵ条の藩主心得)が元です。

[3-2]「べこや」。米沢駅前の焼肉店の店名。「べこ」は牛のことで,方言ネーミングの店名です。今年,お店はリニューアルし,ロゴも変わりました。

あいべ
【写真5】あいべ
(クリックでメッセージも表示)
方言のれん
【写真6】方言のれん
(クリックで方言番付も表示)

[4]「あいべ」。施設名の方言ネーミングです。「あいべ」【写真5】は,「(いっしょに)行こう」の意で,名まえ自体が誘いのことばになっています。東北の他地方では,似た語形・意味で「あべ」などと言います。この施設には,「負けてはならぬ……気合いだべ」「よってってくだい」の方言メッセージもあります。

[5]方言みやげ他。米沢方言の,方言のれん,方言手ぬぐいがあります。米沢駅には,方言番付がありました。【写真6】

《謝辞》米沢観光物産協会におかれましては,「おしょうしなガイド」の取材に関して特別のご厚誼を賜りました。ここに記しまして感謝の意を表します。

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 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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地域語の経済と社会 第66回

2009年 9月 19日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

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第66回「世界最小の方言グッズと方言メッセージ」

(画像はクリックで拡大します)
大阪弁おみくじ綿棒
【写真1】大阪弁おみくじ綿棒
東北弁綿棒
【写真2】東北弁綿棒

 方言をグッズやメッセージに出すとき,たいていは方言を大きく示します。そういうなか,今回は,大かたとは異なる発想からの,小さいものに小さく示す,方言グッズと方言メッセージを紹介します。

 一つめは,方言グッズ「方言綿棒」です。株式会社山洋(大阪府富田林市)の製品で,「大阪弁おみくじ」【写真1】と「東北弁」【写真2】です。綿棒1本1本の全部に方言が記載されています。綿棒の長さは7.8cm(軸は5.5cm),軸の直径は2mmです。この小ささから「世界最小」としました。両方とも1筒110本入りです。

 1回使い切りで,第51回第56回で紹介した「方言日用品」の仲間でもあります。

 「大阪弁おみくじ」は,42種類の大阪弁の表現が「おみくじ」の吉凶度に合わせてあります。10種類ここで紹介します。42種類全部は,ぜひ現物でご覧ください。

超吉:あんた今日は最高の日やで!/大大吉:調子のりまっせ!いきりまっせ!/大吉:ごっつうええやん!/中吉:おおきに!おおきに!/小吉:こんぐらいが一番やねん/小吉:たのむでしかし!/吉:ぼちぼちでんな~/凶:あきまへんわ!/大凶:えらいこっちゃ!/大大凶:さぶいぼ(鳥肌)たってきた!

 「東北弁」は,28種類(青森,岩手,山形,福島:各5,秋田,宮城:各4)の方言の文に県名と共通語訳が付いています。各県から1種類ずつ紹介します。( )内は「軸に書いてある『標準語』」です。

青森:な、どさえぐ?ゆさ(あなたどこへ行くの?お風呂にいってくる)/岩手:てづびんで、めーおじゃっこ飲めじゃ(南部鉄でおいしいお茶はいかがですか?)/秋田:泣ぐごはいねぇが~(泣く子はいないか~〔なまはげ〕)/宮城:歯にとうきび詰まっていずいなや(歯にとうもろこしが詰まって違和感があるなぁ)/山形:あんめぐて、んめさくらんぼ(あまくておいしいさくらんぼ)/福島:めんこい赤べご いんねいがい。(ユラユラかわいい赤べこ欲しいでしょう)

おこしやす
【写真3】おこしやす

 もう一つ方言メッセージで,箸帯(日本料理店で箸を束ね結ぶ紙)に出された「おこしやす」【写真3】です。京料理の店,美濃吉(みのきち)のものです。「おこしやす」は,「いらっしゃいませ」(注)の意味です。箸の幅と比べて考えますと,その小ささが分かり,やはり「世界最小」としました。小さくても,お客様に必ず見てもらえますね。

 (注)京都のお店のなかには,迎えのあいさつを,常連客には「おこしやす」,初めての客には「おいでやす」として,区別しているところもあると言われます。

 今回紹介した「東北弁綿棒」は,私のゼミの学生が見つけて教えてくれたものです。

 皆さんも,小さい方言グッズを見つけましたら,どうぞ,私たちに教えてください。

《謝辞》
株式会社山洋におかれては,製品の提供に特別の便宜を計ってくださいました。深く感謝の意を表します。

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駅長さんから
【写真4】駅長さんから

〔補遺〕
 第61回アップ後に記録した「みちのくの夏のメッセージ」を付け足します【写真4】。「しゃっけぇ麦茶っこ どうぞ飲んでがんせ」,意味は「冷たい麦茶,どうぞ飲んでください」です。場所は,岩手県の遠野駅です。待合室に置かれた冷水サーバーに大きく書かれています。

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