人名用漢字の新字旧字:「実」と「實」

2018年 6月 7日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第159回 「実」と「實」

新字の「実」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「實」は人名用漢字なので、子供の名づけに使えます。でも、旧字の「實」が子供の名づけに使えるようになるには、長い道のりが必要だったのです。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、部首画数順に2528字が収録されていました。標準漢字表の宀部には「実」が含まれていて、その直後に、カッコ書きで「實」が添えられていました。「実(實)」となっていたわけです。簡易字体の「実」は、「實」に代えて一般に使用すべき漢字、ということになっていました。

昭和21年11月5日、国語審議会が答申した当用漢字表でも、宀部に「実」が含まれていて、その直後に、カッコ書きで「實」が添えられていました。「実(實)」となっていたのです。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、新字の「実」は当用漢字になりました。昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には、新字の「実」が収録されていたので、「実」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。旧字の「實」は、子供の名づけに使えなくなりました。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表では、やはり「実(實)」となっていました。これに対し、民事行政審議会は、常用漢字表のカッコ書きの旧字を子供の名づけに認めるかどうか、審議を続けていました。昭和56年4月22日の総会で、民事行政審議会は妥協案を選択します。常用漢字表のカッコ書きの旧字355組357字のうち、当用漢字表に収録されていた旧字195字だけを子供の名づけに認める、という妥協案です。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、新字の「実」は常用漢字になりました。しかし、旧字の「實」は人名用漢字になれませんでした。旧字の「實」は、常用漢字表のカッコ書きに入ってるけど当用漢字表に収録されてなかったからダメ、となったのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、常用漢字や人名用漢字の異体字であっても、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。旧字の「實」は、全国50法務局のうち19の管区で出生届を拒否されていて、JIS第2水準漢字で、漢字出現頻度数調査の結果が155回でした。この結果、旧字の「實」は、人名用漢字の追加候補となりました。

平成16年9月8日、法制審議会は人名用漢字の追加候補488字を答申し、9月27日の戸籍法施行規則改正で、これら488字は全て人名用漢字に追加されました。この結果、旧字の「實」は人名用漢字になり、子供の名づけに使えるようになったのです。それが現在も続いていて、新字の「実」も旧字の「實」も、出生届に書いてOKなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「扣」と「控」

2018年 5月 24日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第158回 「扣」と「控」

旧字の「控」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。新字の「扣」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。旧字の「控」は出生届に書いてOKですが、新字の「扣」はダメ。どうして、こんなことになってしまったのでしょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、部首画数順に2528字が収録されていました。標準漢字表の手部には「控」が含まれていて、その直後にカッコ書きで「扣」が添えられていました。「控(扣)」となっていたわけです。簡易字体の「扣」は、「控」の代わりに使っても差し支えない字、ということになっていました。

158hikae-old.png昭和21年4月27日、国語審議会に提出された常用漢字表1295字では、手部に旧字の「控」が含まれていて、新字の「扣」は含まれていませんでした。国語審議会が11月5日に答申した当用漢字表でも、旧字の「控」だけが含まれていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、旧字の「控」は当用漢字になりました。ところが、官報に掲載された当用漢字表では、「控」の穴かんむりは、中が「八」の形になっていました。印刷局が官報に使っていた活字が、たまたまそういう字体だったのです。

昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には旧字の「控」が収録されていたので、「控」(中が「八」)は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。新字の「扣」は、子供の名づけに使えなくなってしまいました。

昭和24年4月28日に内閣告示された当用漢字字体表では、旧字の「控」が収録されていましたが、穴かんむりは元に戻っていました。当用漢字表の「控」と、当用漢字字体表の「控」で、微妙な字体差ができてしまったため、どちらが子供の名づけに使えるのかが問題になりましたが、この問題に対し法務府民事局は、どちらも子供の名づけに使ってよい、と回答しました(昭和24年6月29日)。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表1945字には、旧字の「控」が収録されていました。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、旧字の「控」は常用漢字になりました。この際に、当用漢字表の「控」(中が「八」)は、子供の名づけに使えなくなりました。その一方で新字の「扣」は、常用漢字にも人名用漢字にもなれなかったのです。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、JIS第1~4水準漢字を全て含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、旧字の「控」に加えて、新字の「扣」も書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、旧字の「控」はOKですが、新字の「扣」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「梦」と「夢」

2018年 5月 10日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第157回 「梦」と「夢」

旧字の「夢」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。新字の「梦」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。旧字の「夢」は出生届に書いてOKですが、新字の「梦」はダメ。「梦」と「夢」の新旧には議論があるのですが、ここでは「梦」を新字、「夢」を旧字としておきましょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、夕部に旧字の「夢」が収録されていました。その一方、新字の「梦」は標準漢字表には含まれていませんでした。昭和17年12月4日、文部省は標準漢字表を発表しましたが、そこでも旧字の「夢」だけが含まれていて、新字の「梦」は含まれていませんでした。

国語審議会が11月5日に答申した当用漢字表でも、旧字の「夢」だけが含まれていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、旧字の「夢」は当用漢字になりました。昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には旧字の「夢」が収録されていたので、「夢」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。新字の「梦」は、子供の名づけに使えなくなってしまいました。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表1945字には、旧字の「夢」が収録されていました。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、旧字の「夢」は常用漢字になりました。その一方で新字の「梦」は、常用漢字にも人名用漢字にもなれなかったのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、常用漢字や人名用漢字の異体字であっても、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「梦」は、全国50法務局のうち出生届を拒否された管区は無く、JIS第2水準漢字で、漢字出現頻度数調査の結果が0回でした。この結果、新字の「梦」は「常用平易」とはみなされず、人名用漢字に追加されませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、JIS第1~4水準漢字を全て含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、旧字の「夢」に加えて、新字の「梦」も書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、旧字の「夢」はOKですが、新字の「梦」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「楽」と「樂」

2018年 4月 19日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第156回 「楽」と「樂」

新字の「楽」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「樂」は人名用漢字なので、子供の名づけに使えます。新字の「楽」も旧字の「樂」も、出生届に書いてOK。どうして、こんなことになったのでしょう。

大日本帝国陸軍が昭和15年2月29日に通牒した兵器名称用制限漢字表は、兵器の名に使える漢字を1235字に制限したものでした。三省堂編輯所の『常用漢字新辞典』をもとに、おおむね尋常小学校4年生までに習う漢字959字を一級漢字とし、これに兵器用の二級漢字276字を加えて、合計1235字を兵器の名に使える漢字として定めたのです。この一級漢字の中に、新字の「楽」が含まれていて、カッコ書きで旧字の「樂」が添えられていました。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、部首画数順に2528字が収録されており、木部に旧字の「樂」が含まれていました。新字の「楽」は含まれていませんでした。

昭和21年4月27日、国語審議会に提出された常用漢字表1295字でも、木部に旧字の「樂」が含まれていて、新字の「楽」は含まれていませんでした。国語審議会が11月5日に答申した当用漢字表でも、旧字の「樂」だけが含まれていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、旧字の「樂」は当用漢字になりました。ただし、当用漢字表のまえがきには「字体と音訓の整理については、調査中である」と書かれていました。当用漢字表の字体は、まだ変更される可能性があったのです。

字体の整理をおこなうべく、文部省教科書局国語課は昭和22年7月15日、活字字体整理に関する協議会を発足させました。活字字体整理に関する協議会は、昭和22年10月10日に活字字体整理案を国語審議会に報告しました。この活字字体整理案では、「樂」を「楽」へと整理することが提案されていました。報告を受けた国語審議会では、昭和22年12月から昭和23年5月にかけて、字体整理に関する主査委員会を組織しました。この間、昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には、旧字の「樂」が収録されていたので、「樂」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。新字の「楽」は、子供の名づけに使えなくなりました。

昭和24年4月28日に内閣告示された当用漢字字体表では、新字の「楽」が収録されていました。活字字体整理案に従った結果、新字の「楽」が当用漢字となり、旧字の「樂」は当用漢字ではなくなってしまったのです。当用漢字表にある旧字の「樂」と、当用漢字字体表にある新字の「楽」と、どちらが子供の名づけに使えるのかが問題になりましたが、この問題に対し法務府民事局は、旧字の「樂」も新字の「楽」もどちらも子供の名づけに使ってよい、と回答しました(昭和24年6月29日)。つまり、昭和24年の時点で、旧字の「樂」も新字の「楽」も、どちらも出生届に書いてOKとなったのです。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表では、「楽(樂)」となっていました。これに対し、民事行政審議会は、常用漢字表のカッコ書きの旧字を子供の名づけに認めるかどうか、審議を続けていました。昭和56年4月22日の総会で、民事行政審議会は妥協案を選択します。常用漢字表のカッコ書きの旧字355組357字のうち、当用漢字表に収録されていた旧字195字だけを子供の名づけに認める、という妥協案です。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、「楽」は常用漢字になりました。同時に「樂」は人名用漢字になりました。それが現在も続いていて、旧字の「樂」も新字の「楽」も、どちらも子供の名づけに使えるのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「竪」と「豎」

2018年 4月 5日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第155回 「竪」と「豎」

新字の「竪」は人名用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「豎」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。「竪」と「豎」の新旧には議論があるのですが、ここでは「竪」を新字、「豎」を旧字としておきましょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したものでしたが、新字の「竪」も旧字の「豎」も含まれていませんでした。国語審議会は、昭和21年11月5日に当用漢字表を答申しましたが、やはり「竪」も「豎」も収録されていませんでした。当用漢字表は、翌週11月16日に内閣告示されましたが、やはり「竪」も「豎」も収録されていませんでした。昭和23年1月1日、戸籍法が改正され、子供の名づけは当用漢字1850字に制限されました。この時点で、新字の「竪」も旧字の「豎」も、子供の名づけに使えなくなってしまったのです。

半世紀後の平成12年12月8日、国語審議会は表外漢字字体表を答申しました。表外漢字字体表は、常用漢字(および当時の人名用漢字)以外の漢字に対して、印刷に用いる字体のよりどころを示したもので、1022字の印刷標準字体が収録されていました。この中に、新字の「竪」が含まれていました。印刷物には、旧字の「豎」ではなく、新字の「竪」を用いるべきだ、と、国語審議会は文部大臣に答申したのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、文化庁が表外漢字字体表のためにおこなった漢字出現頻度数調査(平成12年3月)、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「竪」は、全国50法務局のうち2つの管区で出生届を拒否されていて、JIS第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が223回でした。旧字の「豎」は、全国50法務局のうち1つの管区で出生届を拒否されていて、JIS第2水準漢字で、出現頻度数調査の結果が4回でした。この結果、新字の「竪」は人名用漢字の追加候補となり、旧字の「豎」は追加候補になりませんでした。

追加候補選定基準 漢字出現頻度数調査
200回以上 50~199回 1~49回
不受理の法務局数 11以上 JIS第1~3水準 JIS第1・2水準 JIS第1・2水準
8~10 JIS第1~3水準 JIS第1・2水準 JIS第1水準
6~7 JIS第1~3水準 JIS第1水準 JIS第1水準
0~5 JIS第1・3水準 - -

平成16年9月8日、法制審議会は人名用漢字の追加候補488字を答申し、9月27日の戸籍法施行規則改正で、これら488字は全て人名用漢字に追加されました。この結果、新字の「竪」は人名用漢字になり、子供の名づけに使えるようになったのです。しかし、旧字の「豎」は、人名用漢字になれませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、JIS第1~4水準漢字を全て含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、新字の「竪」に加えて、旧字の「豎」も書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、新字の「竪」はOKですが、旧字の「豎」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「麦」と「麥」

2018年 3月 22日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第154回 「麦」と「麥」

新字の「麦」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「麥」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。「麦」は、しばしば「夌」の別体としても用いられるのですが、ここでは「麦」と「麥」を新旧の関係としておきましょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、部首画数順に2528字が収録されていました。標準漢字表の麥部には「麦」が含まれていて、その直後に、カッコ書きで「麥」が添えられていました。「麦(麥)」となっていたわけです。簡易字体の「麦」は、旧字の「麥」に代えて一般に使用すべき漢字、ということになっていました。

昭和21年11月5日、国語審議会が答申した当用漢字表では、麥部に「麦」が含まれていて、その直後に、カッコ書きで「麥」が添えられていました。「麦(麥)」となっていたのです。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、新字の「麦」は当用漢字になりました。昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には、新字の「麦」が収録されていたので、「麦」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。旧字の「麥」は、子供の名づけに使えなくなりました。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表では、やはり「麦(麥)」となっていました。これに対し、民事行政審議会は、常用漢字表のカッコ書きの旧字を子供の名づけに認めるかどうか、審議を続けていました。昭和56年4月22日の総会で、民事行政審議会は妥協案を選択します。常用漢字表のカッコ書きの旧字355組357字のうち、当用漢字表に収録されていた旧字195字だけを子供の名づけに認める、という妥協案です。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、新字の「麦」は常用漢字になりました。しかし、旧字の「麥」は人名用漢字になれませんでした。旧字の「麥」は、常用漢字表のカッコ書きに入ってるけど当用漢字表に収録されてなかったからダメ、となったのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、常用漢字や人名用漢字の異体字であっても、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。旧字の「麥」は、全国50法務局のうち出生届を拒否した管区は無く、JIS第2水準漢字で、漢字出現頻度数調査の結果が7回でした。この結果、旧字の「麥」は「常用平易」とはみなされず、人名用漢字に追加されませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、新字の「麦」と旧字の「麥」を含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、新字の「麦」に加え、旧字の「麥」も書けるようになりました。これに対し、日本人の子供の出生届には、新字の「麦」はOKですが、旧字の「麥」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「甜」と「甛」

2018年 3月 8日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第153回 「甜」と「甛」

153amai-old.png新字の「甜」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。旧字の「甛」も、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。「甜」と「甛」の新旧には、実は議論があるのですが、ここでは「甜」を新字、「甛」を旧字ということにしておきましょう。

昭和21年11月5日、国語審議会は当用漢字表1850字を、文部大臣に答申しました。この当用漢字表には、新字の「甜」も旧字の「甛」も収録されていませんでした。当用漢字表は、翌週11月16日に内閣告示されましたが、やはり「甜」も「甛」も収録されていませんでした。そして、昭和23年1月1日に戸籍法が改正された結果、新字の「甜」も旧字の「甛」も、子供の名づけに使えなくなってしまったのです。

それから半世紀の後、平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、「常用平易」な漢字であればどんな漢字でも人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、文化庁が表外漢字字体表のためにおこなった漢字出現頻度数調査(平成12年3月)、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「甜」は、全国50法務局のうち出生届を拒否された管区は無く、JIS第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が128回でした。この結果、新字の「甜」は「常用平易」とはみなされず、人名用漢字に追加されませんでした。旧字の「甛」は、そもそもJIS第1~4水準漢字に含まれていないので、審議の対象になりませんでした。

その一方で、平成16年4月1日、法務省民事局は『戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書』を通達、合わせて戸籍統一文字を発表しました。戸籍統一文字は、電算化戸籍に用いることのできる文字で、当初の時点では、漢字は55255字が準備されていました。この55255字の中に、新字の「甜」と旧字の「甛」が含まれていたのです。つまり、コンピュータ化された戸籍の氏名には、新字の「甜」も旧字の「甛」も使えるよう、システム上は設計されているのです。けれども法務省は、出生届には、新字の「甜」も旧字の「甛」も許しませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、13287字を収録していました。この13287字の中に、新字の「甜」と旧字の「甛」が含まれていたのです。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、「甜」や「甛」が書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、新字の「甜」も旧字の「甛」もダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「集」と「雧」

2018年 2月 22日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第152回 「集」と「雧」

152gather-old.png新字の「集」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「雧」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。「集」は出生届に書いてOKですが、「雧」はダメ。新字の「集」には隹が一羽しかおらず、あまり集まっているように見えないのですが、どうしてこんなことになったのでしょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、隹部に新字の「集」が収録されていました。その一方、旧字の「雧」は標準漢字表には含まれていませんでした。昭和17年12月4日、文部省は標準漢字表を発表しましたが、そこでも新字の「集」だけが含まれていて、旧字の「雧」は含まれていませんでした。

昭和21年4月27日、国語審議会に提出された常用漢字表1295字には、隹部に新字の「集」が含まれていて、旧字の「雧」は含まれていませんでした。国語審議会が11月5日に答申した当用漢字表でも、新字の「集」だけが含まれていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、新字の「集」は当用漢字になりました。昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には新字の「集」が収録されていたので、「集」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。旧字の「雧」は、子供の名づけに使えなくなってしまいました。

昭和56年3月23日、国語審議会が答申した常用漢字表1945字には、新字の「集」が収録されていましたが、旧字の「雧」はカッコ書きにすら入っていませんでした。昭和56年10月1日に常用漢字表は内閣告示され、新字の「集」は常用漢字になりました。その一方で旧字の「雧」は、常用漢字にも人名用漢字にもなれなかったのです。

平成16年4月1日、法務省民事局は『戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書』を通達、合わせて戸籍統一文字を発表しました。戸籍統一文字は、電算化戸籍に用いることのできる文字で、当初の時点では、漢字は55255字が準備されていました。この55255字の中に、「集」と「雧」が含まれていたのです。つまり、コンピュータ化された戸籍の氏名には、「集」も「雧」も使えるよう、システム上は設計されているのです。けれども法務省は、出生届には新字の「集」しか許しませんでした。結局、それが現在も続いていて、新字の「集」は子供の名づけに使えますが、旧字の「雧」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「鴬」と「鶯」

2018年 2月 8日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第151回 「鴬」と「鶯」

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、部首画数順に2528字が収録されていました。標準漢字表の鳥部には「鶯」が含まれていて、その直後に、カッコ書きで「鴬」が添えられていました。「鶯(鴬)」となっていたわけです。簡易字体の「鴬」は、「鶯」の代わりに使っても差し支えない字、ということになっていました。昭和17年12月4日、文部省は標準漢字表を発表しましたが、そこでは旧字の「鶯」だけが含まれていて、新字の「鴬」は含まれていませんでした。

昭和21年11月5日、国語審議会は当用漢字表1850字を、文部大臣に答申しました。この当用漢字表で、国語審議会は、「鴬」も「鶯」も削除してしまいました。当用漢字表は「使用上の注意事項」で「動植物の名称は、かな書きにする」としており、このルールに従えば、新字の「鴬」も旧字の「鶯」も、当用漢字表には不要だと判断されたのです。当用漢字表は、翌週11月16日に内閣告示されましたが、やはり「鴬」も「鶯」も収録されていませんでした。そして、昭和23年1月1日に戸籍法が改正された結果、「鴬」も「鶯」も子供の名づけに使えなくなってしまったのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、常用漢字や人名用漢字の異体字であっても、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「鴬」は、全国50法務局のうち出生届を拒否した管区は無く、JIS第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が22回でした。旧字の「鶯」は、全国50法務局のうち出生届を拒否した管区は無く、JIS第2水準漢字で、出現頻度数調査の結果が574回でした。この結果、新字の「鴬」も旧字の「鶯」も、「常用平易」とはみなされず、人名用漢字には追加されませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、JIS第1~4水準漢字を全て含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、新字の「鴬」も旧字の「鶯」も書けることになりました。でも、日本人の子供の出生届には、新字の「鴬」も旧字の「鶯」もダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


人名用漢字の新字旧字:「阴」と「隂」と「陰」

2018年 1月 25日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第150回 「阴」と「隂」と「陰」

150nega.png旧字の「陰」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。新字の「阴」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。また、俗字の「隂」も、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。どうして、こうなってしまったのでしょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、阜部に旧字の「陰」が収録されていました。その一方、新字の「阴」や俗字の「隂」は、標準漢字表には含まれていませんでした。昭和17年12月4日、文部省は標準漢字表を発表しましたが、そこでも旧字の「陰」だけが含まれていて、「阴」や「隂」は含まれていませんでした。

昭和21年4月27日、国語審議会に提出された常用漢字表1295字では、阜部に旧字の「陰」が収録されていて、「阴」や「隂」は含まれていませんでした。国語審議会が11月5日に答申した当用漢字表でも、旧字の「陰」だけが含まれていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、旧字の「陰」は当用漢字になりました。ただし、当用漢字表のまえがきには「字体と音訓の整理については、調査中である」と書かれていました。当用漢字表の字体は、まだ変更される可能性があったのです。

字体の整理をおこなうべく、文部省教科書局国語課は昭和22年7月15日、活字字体整理に関する協議会を発足させました。活字字体整理に関する協議会は、昭和22年10月10日に活字字体整理案を国語審議会に報告しました。この活字字体整理案では、「陰」を「隂」へと整理することが提案されていました。報告を受けた国語審議会では、昭和22年12月から昭和23年5月にかけて、字体整理に関する主査委員会を組織しました。主査委員会では、ところが、当用漢字の画数を減らす方向で議論が進みました。活字字体整理案で画数が増えてしまっていた「隂」は、「陰」に戻すことになったのです。この間、昭和23年1月1日に戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が、この時点での当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には、旧字の「陰」が収録されていたので、「陰」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。「阴」や「隂」は、子供の名づけに使えなくなりました。そして、昭和24年4月28日に内閣告示された当用漢字字体表にも、旧字の「陰」だけが収録されていました。その後、常用漢字表の時代になっても、旧字の「陰」だけが出生届に書いてOKで、「阴」や「隂」はダメでした。

平成16年4月1日、法務省民事局は『戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書』を通達、合わせて戸籍統一文字を発表しました。戸籍統一文字は、電算化戸籍に用いることのできる文字で、当初の時点では、漢字は55255字が準備されていました。この55255字の中に、「阴」と「隂」と「陰」が含まれていたのです。つまり、コンピュータ化された戸籍の氏名には、「阴」も「隂」も「陰」も使えるよう、システム上は設計されているのです。けれども法務省は、出生届には旧字の「陰」しか許しませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、「阴」と「隂」と「陰」を含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、旧字の「陰」に加えて、新字の「阴」も俗字の「隂」も書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、旧字の「陰」だけがOKで、新字の「阴」や俗字の「隂」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


次のページ »